コンサルティングの大御所が語るIT業界の構造変化Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年05月27日 08時24分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

アグリゲーターとアウトソーサーが中心に

 まず、その内容を図示したのが右下の図である。

 倉重氏の話をもとに解説すると、図の右側にある「テクノロジー」(IT)を左側にある顧客企業の「ビジネス」に向けて、IT業界がどのような仕組みで提供しているのか。その現状を示したのが下の図、そして今後の姿を示したのが上の図である。

 現状を示した下の図では、テクノロジー側に最も近いコンピュータメーカーが顧客企業の情報システム(IS)部門を通じて、テクノロジーをビジネス側に提供する流れが軸となっている。それにシステムインテグレーター(SIer)やテクノロジーコンポーネントベンダー、コンサルティング会社が、図のような位置付けで関わっているという構図だ。

倉重氏が語るIT業界の構造変化(シグマクシスの設立記者会見の資料より作成)

 それに対し、今後の姿を示した上の図は、ビジネスとテクノロジーの両面において顧客企業が要望することをすべて取り揃える役目を担う「アグリゲーター」、および両面においてアウトソーシングを行う「アウトソーサー」が中心となる。そしてビジネス、テクノロジーそれぞれのコンポーネントベンダーが、アグリゲーターとアウトソーサーを支えるという構図だ。ちなみにビジネスコンポーネントとは、アプリケーション、コンサルティング、リレーションシップといった類のものを指すという。

 そして倉重氏はこう強調した。

 「いまIT業界の構造は、まさしく下の図から上の図へと移行しつつある変革期にある。そうした中でシグマクシスは、アグリゲーターとしての役割を果たしていきたい」

 その意味では、上の図は少々アグリゲーターの存在を誇張した形になっているが、IT業界の構造変化を示すポイントは凝縮されているように思う。

 さらに同氏は、シグマクシスがアグリゲーターとして活動するうえで「1000社を超える三菱商事グループのリアルビジネスによって培われたノウハウが、ビジネスコンポーネントとして存在することが強力なアドバンテージになる」という。加えて同社の強みとなりうるのは、冒頭のコメントにあった「問題解決に向けて最後までお供する」という事業スタイルである。これは顧客満足度調査や数値実績をもとにした成功報酬型プロジェクトを積極的に展開することで実現していく構えだ。

 先に紹介したように、倉重氏はとりわけPwCC日本法人を急成長させた手腕が高く評価され、まさしくコンサルティングの大御所として名が知れ渡っていった。だが、筆者が最も印象に残っているのは、日本IBMでサービス事業を精力的に立ち上げ、当時の同社次期社長の有力候補としても意欲的な姿勢を見せながら、取材の折りにもほとばしるように感じさせた“切れ味の鋭さ”だ。それから15年以上経過した今回の記者会見でも、その印象は変わらなかった。そんな倉重氏が、アグリゲーターとしてこれからのIT業界の構造変化をどう先導していくか、注目したい。

松岡 功

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ