「メールを止めて!」と訴える、受話器の向こうの悲痛な声。残念なことにメールって、いったん送信が完了してしまえば、もう止めることはできないのです。
お願い! 止めてっ!
…突然、電話の向こうから同僚P子の声がした。何をやらかしたのよ、と思いながら鼓膜を守るために受話器を耳から離す。そして深呼吸。いや、ため息だったかもしれない。受話器の向こうのわめき声がおさまるのを待って、「止めるって何を?」と聞き返すわたし。
P子 メールよ! メールを止めてほしいの!
思いもかけない返事である。まさかとは思うけどメールを止めるって、メールサーバを止めろって意味じゃないわよね。それともウイルスに感染して、ジョブが壊れたプリンタが何も印刷されていない紙を吐き出し続けるかのように、迷惑メールを吐き続けているのかしら? 一瞬、わたしの頭をさまざまな事態その対応策がよぎる。とはいえ、まずは状況確認が先だ。受話器をしっかり持ち直し、P子の訴えを聞くことにする。
わたし あなた、メールをしていたの?
「メール」と一口に言っても、やることはいろいろある。わたしの経験では「送信していたの?」とか「添付ファイルを開いていたの?」とか(一般ユーザーにとっての)専門用語で聞くより、「メールしていたの?」と聞いたほうが的確な答えが帰ってくる。なぜだろう。
P子 アドレスを間違えて、関係の無い人にメールしちゃったのよ。お願い止めてー。
良かった。ウイルス感染じゃないのね。良かった。少しだけホッとした。
…いや、良くない。
送信先のアドレスを間違えたということは、内容によっては情報漏えい事故だ。どういう内容のメールを、だれに送信したのだろう。第一、ウチのメールシステムは、アドレス帳に登録された相手にしかメールを出せないようになっている。まったく新しい人、例えば名刺交換したばかりのお客様にメールを出すような場合でも、いったんアドレス帳に登録してからでないと、メールが出せないのだ。ということは、アドレス帳で送信先を選択するときに間違えたのか?
わたし あのね、メールは一度送信したら、もう止められないのよ?
P子 じゃ、そのメール削除して…。
分かってないな、コイツ。
わたし 削除も無理なの。送信しちゃったのなら、多分相手に届いてるわよ?
P子 …どうしよう。
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