タッチ技術台頭で、マウスの時代は終わる?

iPhoneのマルチタッチ技術や顔認識など、代替入力デバイスへの移行が進むとGartnerのアナリストは予測している。

» 2008年06月25日 14時48分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 マウスの時代が終わろうとしているのかもしれない。

 これはGartnerのアナリスト、スティーブ・プレンティス氏が、今年初めに2008 CESの展示フロアを歩きながら思ったことだ。同氏は、顔認識技術やAppleのiPhoneなど、コンピュータの主な操作手段としてマウスに取って代わる多数の技術を目にした。

 同氏は自身の考えを新たな報告書「Gestural Computing: The End of the Mouse(ジェスチャーコンピューティング:マウスの終わり)」にまとめた。マウスは当面は残るだろうが、代替入力デバイスは無視しがたいと同氏はeWEEKに語った。今後2〜4年で、マウスから代替デバイスへの移行はかなり進むと同氏は確信している。

 「総合して考えると、1ボタンあるいは2ボタンマウスというアイデアから大きく離れる動きがあることが極めて明らかになっている」(同氏)

 このトレンドを推進している特定の技術があるわけではなく、各社が製品に加えているさまざまな機能が、コンピューティングをマウスから新しいものへとシフトしていると同氏は言う。その例は、LenovoのコンシューマーPCに搭載されている顔認識機能から、ジェスチャーに反応するカメラ、iPhoneやMicrosoftのWindows 7のタッチ機能にまで及ぶ。

 「特に重要だと思うのは、何年も前からノートPCに搭載されているタッチパッドというよりも、(Apple製品で使われている)新たに登場したマルチタッチパッドだ。われわれは、この種のデバイスの機能の幅と可能性が大きく広げる、複数の指での操作機能を見出した」(プレンティス氏)

 ゲーム業界やホームエンターテインメント業界も、マウスからのシフトを推進している。

 プレンティス氏は報告書で、脳波記録――脳の電気的活性度を測る手法――でゲーム機を操作するインタフェースを開発しているEmotiv Systemsを挙げている。さらに重要なのは、同社が300ドル程度でこの技術を販売しようとしている点だと同氏は言う。

 「非常にマニア的で、ほとんど医療技術と言えるものを300ドルでリビングルームに持ち込んで、『これも欲しい』と思えるデバイスにしている」(同氏)

 1980年代初めに発売されて以来、コンピューティングに欠かせないものだったマウスを置き換えようとする動きは、コンシューマー市場、特にゲームとエンターテインメントが、ついに法人分野でのコンピューティングの考え方を変えられるようになっていることを示している。

 マウスとキーボードはこれからもデータ入力などの作業に使われるだろうが、グラフィックスなどの専門性が高い作業が最初にマウスからシフトし、その後ほかの分野が追随するだろうとプレンティス氏は語る。

 Endpoint Technologies Associatesのアナリスト、ロジャー・ケイ氏も、マウスの将来に懐疑的な見方をしているが、コンシューマーであれ企業ユーザーであれ、ユーザーの気持ちを変えるのは、新技術を紹介することほど簡単ではないと指摘する。

 例えば、マルチタッチに関心を持つ人もいるかもしれないが、画面のシミや汚れなどのささいに思える問題が敬遠を招くかもしれない。

 「自然で人間らしい操作が今後の方向性だと思う。一部の人はそれを支持し、もっと小さなデバイスに向かうだろう」と同氏。「一方で、それを必要としない人もいて、その結果われわれは従来的な入出力の考え方に戻る」

 マルチタッチなどの代替入力手法が入り込む余地があるとケイ氏がみているのは、MID(モバイルインターネットデバイス)という新分野だ。MIDでは高い携帯性を実現し、従来のキーボードやマウスへの依存度を減らすことができる。

 携帯電話市場もPCに大きな影響を及ぼしている。世界中で利用されている携帯電話は30億台で、それに対してPCは10億台だ。プレンティス氏は、iPhoneとそのマルチタッチ機能は、市場の新しいトレンドを歓迎しそうな、数は少ないが影響力のあるユーザー層に支持されていると指摘する。

 マウスの時代は終わりに近づいているのかもしれないが、プレンティス氏の報告書は、キーボードは生き残りそうだとしている。例えば、タブレット型PCは専門的なアプリケーションに適しているが、手書き認識ソフトはあまり普及しておらず、まだ開発の初期の段階にある。音声認識ソフトにも同じことが言えるが、MicrosoftはSyncなどの製品で前進している。

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