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「タッチパネル」――iPhoneが広げたその可能性デジモノ家電を読み解くキーワード

» 2008年06月19日 13時02分 公開
[海上忍,ITmedia]

タッチパネルの原理

photo マルチタッチの秘密は「静電容量方式」のタッチパネルにある

 画面に触れることで操作を行う「タッチパネル」は、すでに馴染み深いものだ。銀行のATM、Palmに代表されるPDA、各種デジタルAV機器のモニターなど、数え上げればキリがない。指(またはタッチペン)という人間の体に近い部分で操作を指示できる直感性が、普及の理由だ。

 そのタッチパネル、液晶などの表示装置とセンサー装置で構成される。通常の(タッチ操作ができない)液晶モニターにセンサー機能を持つ透明な「膜」を組み合わせることでタッチパネルとして機能するというしくみ。つまり、その「膜」(以下、単にタッチパネルとする)こそが、タッチパネルの操作性を決定する部品だ。

主流は「抵抗膜方式」

 タッチパネルは、触れた位置の検出に電気を用いるかどうかで2種類に大別できる。電気を用いる方式が「抵抗膜方式」や「静電容量方式」で、現在主流となっている。用いない方式には、「超音波方式」や「赤外線遮光方式」などがあるが、製造コストの関係からデジタル家電の分野では前者が主流だ。

 抵抗膜方式は、薄いガラスに数ミクロンの微少なスペーサーを配置し、その上にフィルムをはり付けた構造を持つ。フィルムにタッチして圧力をかけることで、ガラス面の電極とフィルムが接触、発生した電圧を測定することにより、触れた位置を検出する。大型化が難しい(面積を大きくすると検出精度が低下しやすい)という欠点はあるが、製造コストが低く軽量化も容易なため、出荷額ベースでは市場シェア9割を超えるタッチパネルの主流となっている。

マルチタッチの秘密は「静電容量方式」

 近年急速にシェアを伸ばしているのが「静電容量方式」。指でパネル表面に触れたとき生じるわずかな電荷の変化をキャッチ、その位置を検出するという技術だ。

 この静電容量方式、7月から日本でも発売される「iPhone」に採用されている(iPod touchにも採用されている)。同時に2カ所以上の接触点を検知(多点検知)できるため、2本の指を使った操作が可能になる。指をつまむ動作(ピンチ)で画像の表示倍率を変化させることは、静電容量方式を採用したタッチパネルでなければ難しい。iPhoneのマルチタッチ機能は、この静電容量方式により実現されているのだ。

 なお、静電容量方式には、表面型と投影型の2タイプがある。後者は小型化も容易で、iPhone/iPod touchに採用されているのもこのタイプだ。現在のところタッチパッド市場に占めるシェアは少ないが、今後は携帯電話など多機能なデバイスにおいて採用が広がるものと予想される。

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