セルフヘルプによる効率向上――FAQの役割や意義アナリストの視点(2/2 ページ)

» 2008年07月04日 14時00分 公開
[忌部佳史(矢野経済研究所),ITmedia]
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多様化する生活者の問い合わせ行動

 FAQシステム市場を考えるには、ソリューション・ベンダーのみならず、それを利用する生活者の行動にも目を向ける必要がある。矢野経済研究所では、FAQサイトへアクセスする動機を生活者の「問い合わせ行動」から理解することを試みた。

 さて、FAQは「よくある質問と回答」であることは述べた通りだが、見方を変えれば、FAQに対する回答主体は必ずしも企業ばかりではない。例えば、PCでトラブルが発生すると、利用者はデルやマイクロソフトなどのメーカーに問い合わせをするが、それだけではなく、周りの友人などに尋ねることも多い。それ以外にも、Yahoo!知恵袋、OKWave など一般生活者同士が互いに助け合うタイプのFAQサイト(本レポートでは質問サイトとする)も存在する。また、2ちゃんねるに代表される掲示板サイトなどで問題を解決するようなユーザーもいるだろう。

 そう考えると、FAQのスコープというものは、下記のようにまとめられる。企業としては、FAQに対する応対を店頭や電話、Web-FAQ、取扱説明書において整備する必要があるし、同時に、口コミや掲示板などでの生活者同士のやり取りにも目を配っておく必要があるといえる。

表2 問い合わせ対応先分類

あなたはどこへ尋ねる? 問い合わせ行動におけるFAQの優先順位

トラブル時の問い合わせ先
<設問内容>

 では、生活者は実際にどのような問い合わせ行動をしているのだろうか。弊社では、その動向を把握するためにインターネット調査を実施した。

  • 調査対象:弊社インターネットアンケート調査YDS登録モニター
  • 標本数 :944サンプル
  • 調査期間:2007年12月3日〜4日
  • 割付条件:男女および20代、30代、40代、50代以上

 ここではある特定のシーンを想定し、それぞれの問い合わせ先を調査した。その結果、どのようなシーンにおいても、概ね問い合わせ先の優先度は下記のような順位となった。

  • 1位:商品説明書や取扱説明書をみる
  • 2位:販売店やメーカー窓口へ電話をする
  • 3位:とりあえず検索エンジンで検索してみる
  • 4位:メーカーのFAQ、Q&Aサイトを見る

 すなわち、ユーザーは、何かトラブルがあれば取扱説明書を見る、電話する、検索する、FAQを見る、という行動順位となっている。4位にはFAQが入ってはいるが、現実的には、取扱説明書と電話の2つで60%を超えており、多くのユーザーがこの2つの方法で問題解決を図ろうとしていることが分かる。

 こうしたことから、FAQは生活者にとって、取扱説明書やコールセンターを補完する役割に位置付けられていることが分かる。また、日本企業では、取扱説明書は各製品事業部、電話応対はコールセンター部署、Web-FAQはホームページ制作担当部署、というようにFAQに関するナレッジが分散しているという指摘がある。しかし、上記の通り、取扱説明書やコールセンター、FAQは相互に補完する役割を担っていることから、企業では各ナレッジを統一的に管理することが重要になってくるだろう。

 そもそも生活者にとっては取扱説明書もFAQも同列に論じられるものである。その点に注意を払い、ナレッジの集約体制を再考する必要があるだろう。現在、各ベンダーからはナレッジマネジメント・ソフトと高度に連携をとることのできる製品が多数発表されている。そうした製品の活用により、顧客との関係強化がより望まれることになろう。

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