よし! 明日はとなりの部門と飲み会だっ――全社的な知の創造職場活性化術講座(2/2 ページ)

» 2008年07月10日 11時35分 公開
[徳岡晃一郎,ITmedia]
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ストリンガーCEOの嘆き

 これに対して現実によく問題視されているのは、「タコツボ化」、「サイロ化」、「つぶつぶ族」、「部門間の壁」、「三遊間のゴロ」などであり、いかにわれわれが自分の身のまわりしか見ていないかを雄弁に物語っている。

 ソニーでは、ハワード・ストリンガーCEOが着任した当時、彼はインタビューで次のように語っている。

 「トップの監督権は消え失せ、ほとんど滑稽なくらいだった。…いくつもあるサイロがそれぞれ独自のインフラを持ち、4000人からの幹部、何千人のストラテジストを抱えているといった具合だ。ソニーはそこで動脈が詰まってしまった。意思決定が非常に難しく、横はおろか縦のコミュニケーションも事実上ない」(日経ビジネス)

 そして全社的な知識の欠落で、出井前会長が描いたネットワーク構想は頓挫していたわけだ。そこでストリンガー氏は、ソニーUnitedをスローガンに、実に豊富なソニーの資源をどう結びつけるか、どうやってシナジーを出すかに腐心した。その結果、多くの融合商品が生まれ、最近の復活につながっている。ソニーの社員たちは複雑な組織や商品体系の中で、どうしても会社の全体像を知る機会を次第に失っていったのであろう。しかし見事克服した。

 このことは、ゴーン改革以前の日産にもあてはまる。ゴーンCEOは有名なクロスファンクショナルチーム(CFT)を結成し、部門間の壁を取り除くことに腐心した。当時の日産は、顧客や日産全体を見るよりも、自分の上司やトヨタばかりを見ていた。全社的な観点で、日産の総力を出すことができずに、多額のムダを発生させていたわけだ。しかし、CFTにより車種の見直しや開発と生産の融合などが劇的に進んだ結果、コストが下がり、より顧客志向の商品開発が進むようになり、V字回復につながっていった。

全社の知にアクセスせよ

 このように、会社の中には実に多くの資源があり、それが部門の壁に阻まれていかされていない。そしてわれわれはその存在する知らないことが多いのだ。それゆえ、まずは「全社の知」にどれだけアクセスし、自分の責任領域において、その知を活用し大きな仕事を構想できるか、こうした発想を持つことが大切になる。

 では、全社の知を蓄えるにはどうしたらよいのだろうか?

 そのためには、

  • 社内のネットワークを充実させる
  • 他部門に関心を持つ
  • 他部門の中計を手に入れて読み込んでみる
  • 他部門との勉強会を開く
  • 顧客の視点で、自社全体、商品やサービスの課題を考えてみる。そしてその疑問を関連部門にぶつけてみる。

 などの手がすぐに思い浮かぶ。このような中から自分の目標にフィードバックをしたり、共通課題をプロジェクト化したりする動きも生まれるはずだ。

 それにしてもこういう動きをする際に役に立つのは、昔は同期のつながりだった。近ごろはそういう横のつながりが減ってきているのが気になる。そのため、飲み会や運動会、研修の際の夜の懇親会、社員クラブ、忘年パーティなどが再び見直されてきている。これらを通じて、社会資本(Social Capital)を再構築しようというわけだ。全社の知を高めるためにも、部下を連れて他部門との飲み会を企画してみてはどうだろうか。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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