電車の中や街頭など、至る所で見られるようになったデジタルサイネージだが、その歴史は意外に古い。香月氏は「過去10年間は失敗の歴史だったのではないか」と振り返る。デジタルサイネージが商用化されたころは、ディスプレイの価格やコンテンツの制作費が高く、コンテンツをリアルタイムに配信できるインフラも整っていなかった。
技術の改良やディスプレイの価格低下、「NGN(次世代ネットワーク)が始まったこと」(香月氏)などにより、これらの問題は解決できるようになってきた。特にNGNを活用すると、広告コンテンツを配信するネットワークのインフラが整備されるため、業界や業種を問わず横断的なコンテンツ配信が可能になる。
顔認識技術などが実用化のレベルに達してきたことも、デジタルサイネージの商用化に寄与している。例えばFAの顔認識の性能は「モニターから10メートル程度離れた4、5人の顔を0.1秒で認識できる」(香月氏)レベル。人間が相手を見て年齢を判断するのと同じ仕組みをFAに学習させており、「属性を正確に判定できる割合は9割程度」(同氏)になる。FAは、骨格や顔色、しわや髪の毛の色など、顔認識に必要なパーツのデータを蓄積した「特徴データベース」を搭載している。このデータを基に顔のパーツのみを解析して、属性を判別する。モニターで撮影した全体の映像はサーバに残さない仕組みとなっており、個人情報保護に関する問題もクリアしている。
従来はデジタルサイネージを見ている人の属性分析はできなかった。しかしこれらの技術を合わせて使うと、どの場所のデジタルサイネージがどういった時間帯に見られているかという詳細な「視聴率」を集められるようになる。
「これらのデータを管理して、デジタルサイネージの設置場所やコンテンツの放映時間を枠に見立てて切り売りするようなビジネスも今後は生まれるだろう」(香月氏)
販売促進において、顧客の消費行動をデータとして収集して、それを活用する手法が取り入れられ始めている。今後は、デジタルサイネージが販売促進の一環となり、企業と顧客の関係を構築する強力な選択肢になるかもしれない。
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