情シスはプロセスの中の人たちである。プロセスとは会社の仕事の中で、ルールで定められた定型的、定常的な仕事をこなすことを指す。プロセスの中にいる人たちは、課業に従事する人と言い換えてもいい。情シスの立ち位置はプロセスの中にある。したがってプロセスの間の予算配分や経費の分配、優先度付けをするにはいいポジションである。
一方、IT投資は戦略的な投資であり経営の視点で遂行されなければならないし、リターンやリスクの評価もその立場で行う必要がある。IT投資は一過性であり、プロジェクトとして遂行されるべきものである。これをプロセスの中に落としてしまうと先ほどの例のようになってしまうのである。
これが経営層にCIOを置かなければならない理由である。
大手企業の中ではCIOの下に課業から独立した戦略企画部門を置き、そこでIT戦略を立案させるという組織にしているところもある。
これは一見よさそうに見えるが難しい点もある。
1つはライン、スタッフの問題である。ラインというのは課業を遂行する組織で会社のモノ作りやサービスなど事業の基幹組織であるため、予算や人事権を持つ。一方、スタッフというのはこうしたプロセスから独立させるのが目的なので、仮に企画能力があったとしても力の源泉である金と人事権がなく足腰の弱い組織になりやすい。CIOの下に設立された戦略企画部門はともすればこうした性質を帯びてしまいがちだ。
もう1つの問題として、定常的な企画組織にしてしまうと、常に企画を考え続けることなり、組織存続のためにどうでもいい企画を捻り出したりする、本末転倒的なことが起こる可能性がある。
それでは委員会方式や兼務方式のようなマトリクス型はどうかというと、責任、権限体制があいまいで結果の出ない無責任な組織になりやすいという問題がある。いずれにしても、組織の問題は決定的な解決策がない。
ある大手企業の社長は、(組織の)タテ、ヨコは我が社の100年の課題であると言っていた。企画に関しては、中小企業では外部専門家の活用を図るというのも有力手段である。
特に中小企業の大規模IT投資は5年、10年に一度ということが多く、社内に専門家を育成することは困難である。外部CIOを利用するというのが有効な選択肢である。
さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。
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