日本一清潔な女子トイレがニッチなビジネスチャンスを生み出した――羽田空港デジタルサイネージ最前線(2/2 ページ)

» 2008年12月15日 08時30分 公開
[藤村能光,ITmedia]
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ニッチ、アイデア勝負……デジタルサイネージ採用側の本音

福井氏と片桐氏 モシカの福井喜朗専務取締役(左)と日本空港ビルデングの片桐康幸課長代理(右)

 羽田空港のイベントや広告関連の業務を手掛ける片桐氏のもとには、デジタルサイネージに関する複数の提案があった。だがいずれの提案も「デジタルサイネージ端末の売り込みが主で、広告事業として成り立つものはほとんどなかった」(同氏)。

 その中で異彩を放っていたのがモシカの提案だった。「女性がトイレにいる2分という平均時間」(福井氏)を活用して、視認性の高い広告展開ができる――月に200万人が利用する羽田空港の女子トイレの環境を余すところなく活用でき、日本中から訪れる女性に的を絞った広告を配信できるという発想が、採用の決め手になった。

 デジタルサイネージには、端末の販売のほかに、配信するコンテンツに広告を差し込むことで出稿主から広告収益を上げるビジネスモデルがある。だが「広告媒体としてのデジタルサイネージは成功が難しい」と福井氏は自らの経験を振り返る。

 スーパーマーケットの買い物客や交通機関の乗客など、設置した場所と関連のあるユーザーに広告を見せられるのがデジタルサイネージの強みだ。だが、人の滞留時間が短い設置場所では、広告をじっくり見てもらいにくい。

 羽田空港の女子トイレは、滞留時間が確保できる清潔な空間を持つ。「アイデアの斬新さやニッチさが(羽田空港の広告における)事業スキームと結びついた」(片桐氏)。

 福井氏は「広告媒体にはユーザーのターゲティング、心理的要素、視認性などを高いレベルで満たす必要がある」と語る。デジタルサイネージを単にコンテンツを配信する端末と見立てるだけでなく、どのターゲットに広告を届けられるかを割り出し、利用者の視線を集められるような環境を考える。端末の設置場所や空間特性、そしてニッチな視点をうまく組み合わせることが、デジタルサイネージを利益に変えるコツの1つになるかもしれない。

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