あらためてUCとは何かを説明しておこう。UCとは、IPネットワーク上で利用される多様なコミュニケーションツールを統合することにより、企業内の情報伝達や意思決定などを効率化し、コストダウンや業務のスピードアップを図るシステムソリューションのことである。
多様なコミュニケーションツールを業務プロセスに応じて自在に使い分けられるようにすることで、ストレスフリーな協同作業(コラボレーション)環境を実現。さらにコミュニケーションの効率化、高機能化を通じて、ユーザーの生産性を高める効果が見込めるのが特徴だ。
UCの機能でキーポイントとなるのが、ユーザーの在席状況を一目で確認できるプレゼンス機能だ。この機能を使えば、相手が在席していれば直接電話をかけ、外出中であれば携帯電話や電子メールで連絡を取る、といった適切なコミュニケーション手段を選択することができる。これによって、不在の相手に何度も連絡を試みるといった“空振り”をなくすことができるわけだ。
これまでの説明は、多分にUCをアプリケーションに落とし込んだ目線で見たものだが、UCのメリットとなる核心はこの目線で見ないと分からない。ではその核心とは何か。それは機器でもシステムでもなく、ビジネスプロセスでの人的遅延をどう抑えるか、ということにある。
いくらさまざまなコミュニケーション手段を駆使したとしても、連絡をとりたい相手が素早く対応できなければ、ビジネスのスピードアップにはつながらない。UCは、ともすれば技術的なテーマと捉えられがちだが、核心は別なところにある。
「ユニファイド」とは「統合」を意味する。しかし、統合そのものはソリューションではない。コミュニケーションを統合して、ビジネスプロセスでの人的遅延をどう抑えるか。それを実現するアプリケーションが普及することこそが、UCのブレークにつながるのではないだろうか。
もう1つ、UCのブレークを阻害する要因として懸念されるのは、「ユニファイドコミュニケーション」という言葉自体が広く認知されるようになるかどうか、だ。まだまだIT関連用語の域を出ていない。決して技術の話だけではなく、人と人とのコミュニケーションのあり方に関わるだけに、重要なブレークポイントになりそうな気がする。
富士通の川妻常務は会見で、「UCは、もはや世界中で使われている言葉だ」と語ったが……。何かいい知恵はないものか、と考えるのは筆者だけだろうか。
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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