「NGNの大きな特徴として、電話番号で相手先のエンドポイントをユニークに指定し、P2P通信ができることがあります。これはインターネットが苦手としていたことです。今後の用途としては、例えば遠隔医療の在宅診断や地方の診療所などでの利用などが考えられます」と佐藤氏は話す。
SUPREE Vision Premierは通常のアナログ電話機のほかにNTTドコモのFOMAとの通信もできる。そのためFOMAとの間でテレビ電話をしながら問診の内容などを書き込める。また、インターネットとNGNの連携したアプリケーションを容易に開発できるので、着信している電話番号からデータベースを検索してその地図情報からGoogleMapを表示するなど、使い方も広がる。
今までこういったシステムを新規に開発しようとすると、電話番号の問題やエンドとエンドを仲介するサーバの設置・開発・運営など費用の問題があった。だがSUPREE Vision Premierを使えば、フレッツ光ネクストの回線を利用できるので、コストを抑えながらサービスを開始できるという。
また、SUPREE Vision Premierをダウンロードすると、サンプルのソースコードをカスタマイズしていくことでベンダー独自のプロダクトも容易かつ低コストで作成できるのも、特徴の1つだ。
例として、在宅介護支援への活用がある。在宅介護支援をする事業者は地方では多いが、例えば「見守りサービス」をやりたくても端末のコストの問題やカスタマイズ性の低さというハードルがあった。SUPREE Vision Premierを使えば、特定の電話番号のみ自動的に応答できるようにしたり、特定の時間・特定の回線のみつながる、などというように業務と連携したアプリケーションを作成し利用できる。
そのほかにも、ブラウザの中に組み込んで使えるという点を生かしたオンラインショッピングサイトへの活用や、携帯電話であっても通常の電話であってもつながるというNGNの特性を生かしたグループウェアなども想定しているという。
これからのNGNにおける伸びをどのように期待しているかという問いに対し、「実際には、爆発的なキラーアプリケーションによって一気に市場が拡大する、という想定はしていない」と佐藤氏は話す。
「一番大事なのはNGNのサービスが“裾野”から広がることです。インターネットにしても、最初に何かしらのキラーアプリケーションで爆発的に広まったというよりも、コンテンツが何もなかったところに、徐々に企業サイトが立ち上がることで拡大しました。NGNについても同様で、今回のSUPREE Vision Premierのようなプロダクトを中心に、地方で小規模な案件が育っていき、それによってNTT東西の光回線がNGNに置き換わり、いつの間にかテレビ電話のようなリッチコミュニケーションが広まるのではないでしょうか。そのためには、中小企業やベンチャー企業に対し、SUPREE Vision Premierで低コストにNGN開発に取り組める環境を提供することが、大切だと考えています」(佐藤氏)
NGNアプリケーションの開発費用が下がれば、ベンダー側が回収しなければならないコストも減らせる。結果、ユーザーにとってのコストメリットが生まれることも期待できるはずだ。
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