プライベートクラウドは「クラウド」かWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年07月27日 08時53分 公開
[松岡功ITmedia]
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ITベンダーには勝手知ったるビジネスモデル

 クラウドのメリットは、コスト削減、最新技術の適用、サービス利用の短期開始や柔軟性など、さまざまな面が挙げられる。とりわけ、ITリソースを自前で持たないことから、初期投資のハードルの低さが中堅・中小企業ユーザーには大きな魅力となっている。

 これに対し、プライベートクラウドはクラウド化のための最新技術やサービス利用面におけるメリットは得られるものの、ITリソースを自前で持つための初期投資はかかる。つまり、従来の自社システム構築と同じだ。この点をはっきりと認識しておく必要がある。

 ただ、ある業界関係者はパブリッククラウドとプライベートクラウドのコスト比較を、タクシーと自家用車に例えて、「要は使用するボリューム。少なければタクシーのほうが有利だが、多ければ自家用車のほうが安上がりで便利」と話す。さらにプライベートクラウドを提供するベンダーの中には、パブリッククラウドに比べてより高いサービスレベルやセキュリティの確保をうたっているところもある。

 クラウドビジネスを推進するITベンダー各社は、ここにきてこぞってプライベートクラウドのソリューションに力を入れている。とくにシステムベンダーにとっては、新たなシステム開発ビジネスのチャンスとばかり、データセンターの拡充と顧客獲得に全力を挙げている。ベンダーからみると、プライベートクラウドは従来のノウハウも生かせる、勝手知ったるビジネスモデルなのである。

 かくして、ある中堅規模の企業経営者から「プライベートクラウドはクラウドか」と聞かれた筆者は、自身の腑に落ちないところも明らかにしようと、上記のように一生懸命、説明した。それをじっと聞いていたその経営者は、「ということは、うちはプライベートクラウドについては、とりあえず気にしなくていいな」と呟いた。なんだか、まだ説明不足のような気がしないでもなかったが……。

 そしてつい先日、今度は中堅のITベンダー幹部から、こんな相談を受けた。

 「うちの規模とリソースで、これからクラウドビジネスにどう打って出ていけばいいのか。そもそも経営陣がクラウドをよく理解していないのか、危機感が薄い。どうにかしなければ……」

 まだまだクラウドは、根本的なことも合わせて丁寧に説いていく必要がありそうだ。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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