番外編・家庭内PLCの使い勝手とセキュリティを考える会社に潜む情報セキュリティの落とし穴(2/2 ページ)

» 2009年09月21日 07時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
前のページへ 1|2       

筆者が感じた長所と短所

 実際にPLCを利用してみての長所と短所を取り上げると、以下のものがあります。あくまで私見で感じたことであり、参考としていただきたいと思います。

長所

  • PLC機器の設定はほとんど不要
  • コンセントがあれば基本的にどこでも利用できる(1階から3階まですべて利用できた)
  • 通信速度が無線よりにも速い(わが家での環境です)
  • セキュリティは通常ではデフォルトでAES 128ビット強度の暗号化が設定されており、無線に比べるとセキュリティレベルが高い
  • PC側の設定は基本的に不要
  • 無線が届かない場所でも利用できる
  • 無線と同様にLANケーブルの敷設が不要であり、床や壁回りがすっきりする
  • PLCのための通信費用は発生しない

短所

  • 現状では3種類の方式(HD-PLC 、Homeplug、UPA)が混在して流通しているため、種類が違うと通信ができない(混在できない)
  • 一般的な戸建てはあまり問題にならないと思われるが、実際につないでみないと分からないトラブルも多い。例えば異なる分電盤のコンセントでは難しい
  • 延長コードやタコ足配線でのPLCの実現は難しい。壁のコンセントに直付することが望ましい(PLC用ノイズフィルタを使うとある程度改善される)
  • 同じコンセント内で冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどが利用していると、電圧の変動が原因と思われる接続トラブルが発生する(これもノイズフィルタで少しの改善効果は期待できる)
  • 干渉状況によっては電波障害などの発生も考えられ、周辺環境や人体への影響などの可能性も考えられている(実際に悪影響があったという報告も存在するが、公式には認定されていない)

実際のところは?

 PLCを実際に利用した長所と短所は以上のようなものですが、一般的には電波障害の問題、分電盤を超えた環境での盗聴問題(ろう電により盗聴が可能)、近隣とのノイズ問題、アマチュア無線との干渉などの短所が指摘されているようです。実際にはどのような状況なのでしょうか。

 例えばWikipediaサイトのPLCの項目を見ても、ユーザーなどのさまざまな意見や指摘が乱立しており、これは関心の高さを表す一方で、逆に使用環境が安定しないという一面を浮き彫りにしているとも思われます。

 ここでは電波監理審議会が承認した「便利な機器」としてのPLCをどのように活用すればいいのかという面にしぼって解説したいと思います。わたし自身、既に3年ほどPLCを利用した結果として、「自宅で有線LANや無線LANを検討して、どうしても無理ならPLCが有効な解決策になり得る」ということを実感しています。

 人体への影響などは専門家がさまざまな調査を行っていますが、現状では明確な結果は得られていないようです。PLCは欧米でも広く使われている技術であり、これらに関してはわたしもその経緯を見守っているところです。機器の費用は必要ですが、便利にインターネットを使うために手段としてPCLを検討してみてはいかがでしょうか。

 さて、セキュリティ対策の設定はどうでしょうか。実は作業の必要性はほとんどありません。大部分が自動設定であり、無線LANのセキュリティ設定で悩んだ方にとっては驚くほど簡単です。

 通信内容はデフォルトでAES暗号が実施されており、この暗号化方式は極めて強力であるため、解読は至難のわざとなり、ユーザーは安心して使えます。(しかし、複数の同じ機器で同じ設定をしていることでの脆弱性は回避できません。あくまで暗号化は通信回線の中だけになります)。このようなセキュリティリスクは存在しますが、そのことを念頭に置いていくことで有用な通信手段として今後の普及を期待しています。

企業向け情報サイト「ITmedia エンタープライズ」へ

過去のセキュリティニュース一覧はこちら

萩原栄幸

株式会社ピーシーキッド上席研究員、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、日本セキュリティ・マネジメント学会理事、ネット情報セキュリティ研究会技術調査部長、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、情報セキュリティに悩む個人や企業からの相談を受ける「情報セキュリティ110番」を運営。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


過去の連載記事一覧はこちらから


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ