中小企業のセキュリティ強化にフォーカス――米WatchGuard

UTMベンダーの米WatchGuardは、中小企業のセキュリティ強化の支援を目的に、サービス形態の多様化や情報漏えい対策の提供へ注力すると表明した。

» 2010年02月12日 09時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米UTM(統合脅威管理)ベンダーの米WatchGuard Technologiesは、国内の中小企業向けにセキュリティ強化を支援する施策を展開するという。このほど来日したグローバルチャンネルおよびフィールドマーケティング担当ディレクターのマーク・ロマーノ氏が説明した。

 市場動向について同氏は、「2008年の経済危機で企業の投資が全体的に縮小ムードとなったが、ネットワーク経由で侵入するマルウェアなどの脅威が高まり、セキュリティ対策への投資は堅調なようだ」と話した。

ロマーノ氏

 中小企業の多くは人材面や資金面において大企業並みにセキュリティ対策へ投資することが難しいとされているが、同氏は投資コスト対する製品の高いセキュリティ性能やパフォーマンスがユーザーへ受け入れられつつあると自信を示す。「“合格点”のセキュリティ環境をユーザーもパートナーも評価してくれている。今後はより柔軟な運用ニーズへ応えるサービスと、情報漏えい対策などの新たなソリューションを提供する」(同氏)という。

 同社では、これまでシグネチャベースやプロキシによるコンテンツ解析などの多層的な脅威検知技術、非技術者でも容易に理解できることを目指したグラフィカルなリポート機能の提供などに注力してきた。これらの技術や機能を安価にユーザーへ提供する方針を掲げており、中小企業や地方拠点などの単位で導入が増えているという。

 「日本のある地方都市では400校以上の学校にUTMを一斉導入していただいた。中小の組織では長期間にわたって機器を運用している場合が多いと聞くが、その置き換えにコストパフォーマンスに優れた選択肢を提供できた結果だろう」(同氏)

 サービス形態の多様化は、ユーザー企業や販売代理店などのパートナーからの要請に基づくもので、2009年後半には同社のUTMアプライアンスを使用してセキュリティ対策サービスを提供する事業者向けのプログラムを開始した。

 これにより、UTMが搭載する各種のセキュリティ機能やリポート機能を月額単位で利用するといったサービスが可能になった。国内パートナーでは複数の事業者が高度な管理機能と併せてネットワークセキュリティサービスを始めたほか、UTMアプライアンス本体を月額でレンタルする事業者も現れた。今年春までには10社以上の事業者がサービスを始める見込みとなっている。

 「安心できるセキュリティ対策を使いやすく提供することは、中小企業にとって重要な点だ。競合他社の中には高性能を訴求してハイエンド市場に注力する動きがあるが、われわれは市場規模も大きい中堅・中小企業のセキュリティ強化を支援することが重要だと考えている」(ロマーノ氏)

 UTMに続く事業分野として情報漏えい対策の「Data Loss Prevention(DLP)」やメール・Webセキュリティ機能を統合したアプライアンス「XCS」リシーズの投入を計画する。XCSはB2009年8月に買収した米BorderWareの技術をベースにしたもので、すでに米国ではアプライアンス製品を提供している。国内でもBorderWare時代に一部のデータセンターで導入実績があるという。

 XCSのDLP機能では、ユーザーが設定したポリシーに基づいて、UTMと同様に複数の解析技術を使用しながら企業内からネットワークの外部へ転送されるデータのコンテンツ内容を分析し、機密情報や顧客情報などの流出を防ぐという。国内では日本市場への対応を図った上で提供する。

 国内では当面、金融や製造業など特に知的財産を数多く抱えるデータセンターでの利用を見込むが、将来的にはセキュリティサービスとして複数の事業者と共同でサービス展開することを視野に入れる。情報漏えい対策は企業規模を問わず重要な課題となっているが、DLPソリューションは運用規模が大きく導入コストも高価なために大企業向けのものが多い。現状では中小企業が導入するにはハードルが高いが、サービス化などによって中小企業でも利用しやすく道が開けるという。

 ロマーノ氏は、「2010年もこうした中堅・中小企業向けに注力することで、多くのユーザーから評価をいただけるようにしたい」と述べている。

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