3年で36万社の小規模企業を支援、弥生とMSがIT推進で提携へ

弥生とマイクロソフトは10人以下の小規模企業のIT化促進を目的に、プロモーション活動やSaaS型サービスの開発などに着手する。

» 2010年03月26日 17時15分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 弥生とマイクロソフトは3月26日、従業員20人未満の小規模企業や個人事業者のIT化促進を目的に協業すると発表した。当初は3年で約36万社への支援を目指していくという。

 内容は、1)業務IT化促進の啓発や支援、2)販売促進、3)最新プラットフォームへの対応、4)新規製品での市場開拓――の4つで、両社のパートナー企業やハードウェアメーカー、家電量販店も含めた形で展開する。さらに、2011年中の提供開始を目標に「弥生SaaS」(仮称)というSaaS型サービスを共同展開することでも合意した。

協業を発表した弥生の岡本氏(左)とマイクロソフトの樋口氏

 協業理由について弥生の岡本浩一郎社長は、小規模企業で業務効率化への取り組みが遅れている実情を挙げ、改善のためには業務環境そのものに踏み込む必要性があると判断したためだという。「ITインフラに強いマイクロソフトと業務インフラに強い弥生が手を結ぶ意味は大きい」(岡本氏)

 岡本氏によると、同社顧客の87%が10人未満の企業であり、20人未満を含めると90%以上になる。こうした企業の業務処理では外部に委託しているケースも多いが、自社で行う場合に紙の書類に手書きで処理している割合が多いという。

 同社が2009年に調査した結果、20人未満企業における会計業務では、39%が手書きで処理し、業務ソフトで処理しているのは26%だった。一方、20〜299人の企業は手書きが35%、業務ソフトは40%に上る。20人未満の企業と20人以上の企業とでのIT化の差異は、販売管理や給与計算などの業務になると、さらに拡大している現状が分かった。

弥生の顧客企業における業務別の処理方法の実態

 岡本氏は、「これまではパッケージソフトで業務効率化を支援できるよう挑戦してきたが、今後は顧客の業務環境に合わせて、パッケージソフトやサービスなどさまざな手段を柔軟な組み合わせて提供できるようにしたい」と話す。

 またマイクロソフトの樋口泰行社長は、「プラットフォームベンダーとして製品をより活用していただきたいが、小規模企業ではWordやExcelまでにとどまってしまっている。こうした企業と関係の深い弥生との協業を通じて、ソフトウェアの価値を伝えていきたい」と述べた。

製品面での協業イメージ

 今後2社では、PCメーカーや家電量販店とも共同で業務別のセミナー開催やプロモーションを全国規模で展開する。弥生SaaSは既にWindows Azureをベースに開発を始めており、今年中盤に一部の顧客へβ版を公開し、2011年中盤に正式サービスに移行する計画。弥生では、開発環境に.NETやVisual Studioを導入しており、「Windows Azureを選ぶのは必然の流れ」(岡本氏)という。

 弥生SaaSでは、現在提供する会計や給与計算などの業務別製品のオンライン版ではなく、横断的な業務環境を構築できる新たなコンセプトで提供していく。

 岡本氏は、「いずれはパッケージ製品とサービスの境界がなくなっていくと思うが、小規模企業に浸透するには5〜10年はかかる。日本企業の99%を占めるといわれる小企業のうちの1割をまずは支援したい」と話している。

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