本稿では、近年急速に成長を遂げているポイントモールを解説する。クレジットカード会社を例に、販促型のポイントモールを展開する理由を考えてみよう。
まずは、クレジットカード会員の決済数/決済金額の拡大が考えられる。総量規制などの法規制の対応策として、ネット事業への注力がみられる。次に、ネット会員化によるコスト削減である。インターネット経由で会員に情報を配信することで、クレジットカード利用明細書の送付コストなどを減らせる。
一方、通販系のECサイトなどを代表例とする囲い込み系のポイントモールは、ポイントの付与対象を他社にまで拡大し、発行ポイントの流通量を増やしている。目的は、貯まったポイントを自社で利用してもらうことにある。
事業者の分類 | サービス展開理由 |
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クレジットカード系 | クレジットカード会員の決済件数/決済金額の拡大。ネット配信により、クレジット明細送付費用などのコスト削減 |
囲い込み系 | 自社のポイント流通量の拡大 |
表2:事業分類別のサービス展開の目的(出典:矢野経済研究所) |
販促型ポイントモールについて、クレジットカード会社を例に取り、さらに掘り下げてみたい。リアル会員がポイントモールを利用するには、新たにネット会員登録をする必要がある。クレジットカード会社は、既存のリアル会員にサービスを告知し、ネット会員としての登録を喚起することが求められる。
しかし、多くの企業において、社内の担当部署間の連携等が問題で、十分な告知ができていないのが現状である。ポイントモール担当部署が既存会員への告知を強化するには、「全社的に取り組む」という意思統一が不可欠になる。今、販促型ポイントモールの展開で先行しているのは、いち早く全社的な取り組みを進めているクレディセゾンなどの企業である。
会員を提携企業に送客するクレジットカード系サービスは、購買意欲の高い顧客を獲得できるため、加盟サイトが増えている。ポイントモールの利用は通常の購買に比べて多くのポイントを獲得できるため、リアル会員が新たにネット会員の登録をする動きが起きている。
一方で、まだネット会員に登録していないリアル会員も多い。そのため、ネット会員の新規獲得を狙うクレジットカード系サービス企業は、既存会員に継続的な告知をしていく必要がある。また、ポイントモールを展開していないクレジットカード会社も多いが、今後は売り上げ拡大を見込み、ポイントモール事業に参入する可能性が高い。
クレジットカード系ポイントモール市場を左右する主な要素は、(1)サービスの利用者数、(2)サービス展開企業数、(3)既存展開企業のサービスに対する注力度――の3つだ。
それぞれの傾向はこうだ。(1)は、既存のリアル会員に対するサービス告知の強化に伴い、利用者が増えていく。(2)はポイントモールを展開していない企業が同事業に参入していく。(3)はコスト削減や新たな収益の確保というメリットを見込んだポイントモール運営が増えていく。
囲い込み系ポイントモール市場を左右する主な要素は、(1)自社発行ポイント流通量、(2)サービス展開企業数――の2つである。
(1)は、囲い込み系ポイントモールで売り上げ拡大を狙う既存/新規展開企業が、ポイントの発行量を増やしていく。(2)は現在、一部のEC企業に限られているが、売り上げ拡大に向け、同事業に参入する企業が増える。
以上から、ポイントモール市場は今後も拡大していくと推察される。
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