Microsoftのソーシャル携帯「KIN」はなぜダメになったのか

発売から2カ月足らずで終了が決まった「KIN」プロジェクト。月額料金の高さが弱点として指摘されていたが、開発過程でも迷走があったようだ。

» 2010年07月02日 17時54分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftがソーシャル携帯「KIN」を発売してから50日たたないうちに、そしてわたしが「Microsoft KINの値下げはトラブルの兆候」というコラムを書いてから24時間たたないうちに、同社はKINプロジェクトの終了を発表した。

 「KINチームはWindows Phone 7チームに統合し、KINの貴重なアイデアと技術を将来のWindows Phoneに取り入れる」とインターネットで出回っているMicrosoftの声明文には書かれている。

 Verizonは最近、ずんぐりした「KIN ONE」を2年契約付きで49.99ドルから29.99ドルに、長方形のKIN TWOを99.99ドルから49.99ドルに値下げした。これらの端末は通話機能に加え、SNSのアップデートを投稿する機能を備えているが、サードパーティーのアプリは使えないし、ブラウザはFlashをサポートしておらず、ゲームもない。

 なぜKINはダメになってしまったのだろうか?

 KINが不名誉な終わりを迎える前から、アナリストは同製品の致命的な弱点となりそうな要素を指摘していた。それはデータプランの月額料金だ。通話無制限プランで月額69.99ドル(高級オプション)、450分の通話で39.99ドル(最も安価)、さらにデータ通信料が29.99ドルかかる。子供の携帯電話に毎月70〜90ドル払うのを渋る保護者には高すぎるだろう。それに多くのティーンには、このくらいの携帯代を軽く払えるほどの稼ぎはない。

 しかし、KINのあまりにも早い死は、別の要素が作用したことも示唆している。Microsoftは5月末にエンターテイメント・デバイス部門を大幅に再編し、同部門の社長のロビー・バック氏とデザイン・開発担当上級副社長J・アラード氏が退社した。この部門はXboxシリーズやZune、KINなど消費者向け製品を担当している。

 この再編に続き、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOはアンディ・リーズ上級副社長をモバイルコミュニケーション事業の責任者に昇進させ、自身の直属とした。公式の経歴によれば、リーズ氏は娯楽やゲームに通じたタイプというわけではない。同氏の以前のMicrosoftでの業務はサーバ&ツールマーケティング・ソリューション部門のコーポレート副社長で、国際販売・マーケティング・サービス部門でもさまざまなポストに就いていた。

 ブログメディアEngadgetは6月30日の投稿で、Microsoft社内の「信頼できる筋」からの情報として、リーズ氏が5月の昇進のかなり前からKINにかかわっていて、プロジェクト参加者全員に「最初からやり直して、Windows CEを基盤にOSを作り直す」よう支持したと示唆している。これは、クラウドとSNS機能の両方を活用した端末を作る最初の作業が終わった後のことだった。このOSの変更が、KINのリリーススケジュールが18カ月遅れる原因となったようだ。その間に、Verizonはこのプロジェクトの見通しに無関心になった。

 MicrosoftはKINの立ち上げに際して大々的なマーケティングキャンペーンを展開した――TwitterフィードにFacebookのページ、30秒のテレビCMが5分おきに流れているように思えた――が、Verizonは同製品の売り込みにそれほど熱心ではなかったと言われている。売れ行きが悪かったことが、さらに状況を悪化させたのだろう。

 KINを失敗したハイテク製品のカテゴリーに入れて次へ進むのはいいが、Engadgetの情報筋は、この状況がWindows Phone 7に悪影響を及ぼす可能性を示唆している。

 「われわれの情報筋は、今回の提携のトラブルにより、MicrosoftがWindows Phone 7のローンチパートナーとしてVerizonを敬遠していると話している」と同ブログは語り、「最初(のWindows Phone 7製品)はCDMAキャリアのVerizonからは投入されず、むしろGSMキャリアが最初に対応するだろうと情報筋は主張している」と付け加えている。

 KINの失敗は、Microsoft――エンターテイメント・デバイス部門は言うまでもなく――が比較的小さな損失で吸収できるものなのだろう。だが、もしも同社がWindows Phone 7に向けた準備でつまずいているのなら、大きな問題を抱える可能性がある。

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