日本IBMはクラウド環境の構築に適したアプライアンス製品の最新版を発表した。ソフトウェアブランド「WebSphere」の戦略も説明し、企業にビジネスの俊敏性をもたらすというメッセージを発信した。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は7月6日、クラウド環境を迅速に構築できるアプライアンス製品の最新版「IBM WebSphere CloudBurst Appliance V2.0」の提供を7月23日に開始すると発表した。前版に比べ、対応するミドルウェアやハイパーバイザー、OSを拡充した。
IBM WebSphere CloudBurst Applianceは、OS、データベースソフトウェア、仮想アプライアンスを配置するソフトウェアなどを組み合わせ、短時間でアプリケーションサーバ環境を構築する製品。アプリケーションサーバやデータベースの構成、ネットワークなどを事前に1度設定すると、仮想サーバへの配布作業を自動的に実行する。数日を必要としていた開発環境の構築を、数分程度に短縮した事例もあるという。
最新版では、サーバに配信できるミドルウェアを新たに3種類拡充した。ビジネスプロセスを管理する「IBM WebSphere Process Server Hypervisor Edition」、CloudBurstで配信したミドルウェア環境を管理する「IBM WebSphere Application Server Hypervisor Edition Intelligent Management Pack」、データベースを管理する「DB2 Enterprise Server Edition」である。前版では、アプリケーションサーバ「IBM WebSphere Application Server」のみに対応していた。
配信できるOSとして、新たに「Red Hat Enterprise Linux Server」を追加。前版の「Novell SUSE Linux Enterprise Server」と併せて、2種類のOSに対応した。ハイパーバイザー「IBM PowerVM」「IBM z/VM」も新たにサポートした(前版ではVMware ESXに対応)。
価格は643万5000円(税別)。7月23日に出荷を開始する。CloudBurst Applianceの活用には、IBM WebSphere Application Server Hypervisor Edition(254万6000円:税別)を導入しておく必要がある。
同日に開催した記者会見では、日本IBMのソフトウェアブランド「WebSphere」の戦略が紹介された。
日本IBM 理事 WebSphere事業部長の熊本義信氏は「5年前からエンタープライズサービスバス、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の領域にも力を入れ、現在はBPM(ビジネスプロセス管理)にも進出し、よりビジネスに近い部門で顧客企業に価値を訴求する」とWebSphereのソフトウェア戦略を説明する。
ビジネス領域のサービス提供において鍵を握るのが、IBMの買収戦略だ。WebSphereに関連する企業として、直近では、BPMベンダーのLombardi(1月)、クラウドサービスインテグレーションのCast Iron Systems(5月)、B2BインテグレーションのSterling Commerce(5月)、Web解析のCoremetrics(6月)を買収している。ここ半年で、4つのラインを新たに整備した形だ。
これらの買収により、ビジネスプロセスの自動化、モデリング、パフォーマンス管理を含めたサービスを提供できるとしている。WebSphereは「トランザクション管理」「SOA基盤の整備」を経て、現在は「ビジネスの俊敏性」を訴求している。熊本氏は「(ビジネス環境の)変化に対応できるIT基盤、ビジネスプロセスを整備することが重要」と話し、WebSphereが企業のビジネス部門とIT部門の橋渡しを支援すると強調した。
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