企業顧客のニーズに応えるべく、IBMがクラウドサービスの統合技術で実績のあるCast Ironを買収した。オンプレミスの基幹アプリケーションと短期間で統合できるのが最大の強みだ。
米国時間5月3日、ラスベガスの「Impact 2010」カンファレンスでIBMはクラウドサービスのインテグレーションで実績のあるCast Iron Systemsを買収すると発表した。
カリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置くCast Iron Systemsは、かつてはEAI(エンタープライズアプリケーション統合)のソフトウェアを開発・販売していたが、最近では成長著しいクラウドサービスと企業が持つオンプレミスの基幹アプリケーションを連携させるソフトウェアやアプライアンスに軸足を移している。多くの企業がITの簡素化と経済性を求めて、クラウドサービスの活用を検討しているが、当面は自社のデータセンターに構築したシステムと組み合わせる「ハイブリッドクラウド」が主流となるとみられている。従来であれば、連携に多くの工数を必要としたが、同社は数百に上るテンプレートを用意しており、短期間で統合できるのが最大の強みだ。
同社の約75人の社員はIBMに統合される予定。なお、買収金額などは公表されていない。
IBMでソフトウェアを統括するスティーブ・ミルズ上級副社長は、プレスとのQ&Aセッションで「われわれのM&Aは、有機的な成長を促すものであり、既存の製品ラインに上手く適合し、シナジーが期待できるかどうか慎重に見極めた結果だ。われわれは企業内におけるアプリケーションの統合に実績があり、Cast Ironの技術によってさらにクラウドまで拡張できる」と話す。2003年以降、IBMのソフトウェアグループは戦略的な買収を積極的に行っており、これで55社に上る。
Cast Iron Systemsには、Salesforce.com、Amazon、NetSuiteなどと企業内のSAP、JD Edwardsなどをつなぐプリビルドのテンプレートやサービスがある。世界有数の保険・金融サービス企業であるAllianzは、Cast Ironの技術を活用し、自社で構築した保険引受業務のアプリケーションとSalesforce CRMをわずか30日で統合できたという。
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