意外と思われるかも知れませんが、面接において重要なことは次の通りです。
「自白を得るための質問」の基準は、被疑者の説明の非一性に焦点を合わせた質問(追求)が重要です。CFEの資料から、自白を得やすくする面接者の条件をまとめると次のようになります。
逆に自白を妨げる条件は次の3つです。
これらの条件を十分に考えながら、面接に臨む必要があります。ここでの内容はあくまで基本中の基本ですので、それぞれの場面に応じた適切な対応を考慮する必要があるでしょう。
自発的に自白する人はほとんどいません。人が自白をするのは、それにより得られる利益が受ける制裁を上回ると感じたときだけです。有能な面接者は洗練されたテクニックを用いて、「自白をするのが最善の策だ」と被疑者に納得させることができます。面接者は毅然としていなければなりませんが、自白を得るには同時に「思いやり」「理解」「共感」も示さなければならないのです。
この段階での注意事項は、いわゆる「半落ち」の状態である可能性に注意することです。つまり、「ここまでは認めるけど。これ以上は認めない」といった場合です。例えば、「2年前の300万円の横領はわたしですが、昨年の800万円はまったく知りません」「A氏を殺害したのは認めますが、B氏の殺害については本当に何も関与していません」といった証言では、これらが真実かウソかを、別の角度から洗い直す必要があるのです。
自白のステップに入ったら、以下の流れで自白に誘導していきます。
1.「質問」ではなく「声明」で行います。今までの「〜はどうしたのですか?」から、「調査の結果、明らかにこのナイフが犯行に使われたのです。このナイフは犯行の1時間前まであなたが持っていたのも目撃者の証言から明らかになっています」という形にします。この手法はテレビのサスペンスドラマなどでも使われているものです。
2.前述した通り、「道徳的に受け入れられる理由付け」を確立させ、同情的で理解しているフリをします。ただし法的責任を回避できる印象を相手に与えてはいけません。
3.物的証拠は1つずつ重要でないものから提示します。
4.証人が被疑者の発言を否定する立場を取っていることを明示します。
5.直接的表現は絶対に避け、被疑者の「ウソ」に関してする議論を展開します。
6.最終段階では誘導的な選択肢を用意します。もしくは、「はい」「いいえ」で答えられる質問でも良いでしょう。どちらになっても、容疑者が罪を認めたことになるよう誘導します。例えば、「周到に準備したのか? それとも衝動的にやったのか?」「単にお金がほしかったのか? お金に困っていたのか?」という具合です。通常は、否定的な選択肢を先にし、道徳的に受け入れやすい選択肢を後にもっていくことがポイントです。
7.回答がない場合は質問を繰り返す、もしくは角度を変えて派生的な質問に変更します。
今回の内容は、日本公認不正検査士協会の「不正検査士マニュアル」など、さまざまな公開情報をベースにまとめていますが、ごく一部でしかありません。もしこのようなテーマに興味を持ち、仕事としても役立てたい方は、公認不正検査士協会のWebサイトを参照され、公認不正検査士の試験に挑戦してはいかがでしょうか。昔は英語のみの試験でしたが、今では日本語でも受験することができます。
株式会社ピーシーキッド上席研究員、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、日本セキュリティ・マネジメント学会理事、ネット情報セキュリティ研究会技術調査部長、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。
情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、情報セキュリティに悩む個人や企業からの相談を受ける「情報セキュリティ110番」を運営。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。
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