マイクロソフトのクラウドビジネスへの転換は、パートナーの転換も必要という話オルタナティブ・ブロガーの視点

マイクロソフトは今後、クラウドにどれだけ注力するのか。「マイクロソフト パートナー コンファレンス 2010」の発表内容を、オルタナティブ・ブロガー林雅之氏が解説します。

» 2010年09月09日 17時48分 公開
[林雅之,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「『ビジネス2.0』の視点」からの転載です。エントリーはこちら。)

 9月8日、「マイクロソフト パートナー コンファレンス 2010」に参加してきました。

 まず、樋口泰行社長から、「マイクロソフト 2011年度 経営方針」のお話をお聞きしました。会場はたくさんのパートナーやプレスで埋まっており、とても盛況でした。マイクロソフトが、いかにパートナーを重要視しているのかが、肌で感じられるイベントでした。

 樋口社長の口から頻繁に出てきたのは、「クラウド」という言葉です。クラウドビジネスを推進し、クラウドプレイヤーとして市場で優位に立つために、過去の自社のビジネスモデルと向き合い、創造的破壊をしつつ、大きく変わっていかなければならないという力強さを感じました。

 次に、クラウド・プラットフォーム営業本部 本部長 澤円氏が「お客様にクラウドについて語るとき、われわれが語るべきこと」というタイトルで、話されました。パートナー会社も含めて「われわれ」という定義をしており、パートナーとの一体感を強調されていました。

 澤氏はまず、マイクロソフトのクラウド戦略として、“クラウド”へのコミットの話をされました。主なコミットメントは、以下です。

  • 全社的クラウドへの移行宣言(2005年)
  • 年額95億ドルの研究開発投資
  • 4万人いる開発者の70%がクラウドソリューションを担当
  • 7000社以上のパートナーとの戦略的なエコシステムの整備

 次に、マイクロソフトがクラウドビジネスを推進することは、大きなリスクをはらんでいることも語られました。

 まずは、SIビジネスの減少です。すべてがクラウド側でバージョンアップされるようになれば、システム更改提案の機会は減少することになるでしょう。同時に、運用管理案件の減少の問題も指摘しています。月額での定期的な収入が見込めるビジネスなだけに、大きな痛手となります。そして、収益の柱でもあるライセンス商談の減少です。このように、既存のビジネスとのカニバリゼーションをどのように乗り越えていくかが大きな命題となります。

 一方、クラウドビジネスのビジネス機会についても述べられていました。期間の短いシステム構築案件の創出、H/Wの初期不良などのリスク軽減、新規ビジネスのシェア獲得など、です。

 マイクロソフトのクラウドビジネスへの転換は、「持続的イノベーション」なのか、それとも、「破壊的イノベーション」なのか、意見が分かれるところでしょう。いずれにしても、既存のビジネスとのカニバリゼーションの中で、どうやって事業を伸ばしていくのか、今後の展開が注目されます。

 次に、バンテック株式会社のExchange Online、Windows Azureの導入事例が紹介されました。執行役員 情報システム部長 加末哲夫氏が登壇され、メールを中心としたクラウドへの移行メリットやマイクロソフトを選定した理由などについて語られました。

 最後に澤氏は、どのようなキーワードを使ってエンドユーザーに提案をしていけばいいのかというポイントを、パートナー会社に説明されていました。キーワードは次の6つです。「データセンター」「稼働率」「データストア」「散在した拠点」「コスト」「今、すぐに」。

 後半のプログラムは、残念ながら、参加できませんでした。

 マイクロソフトはクラウドビジネスに大きく転換しようとしています。同様に、7000社以上のパートナー企業もこれまでのライセンスビジネスだけでなく、クラウドビジネスへのシフトと新たな市場の開拓が求められていくことでしょう。マイクロソフトがこの先どのように、パートナーと連携しながらクラウドビジネスを展開していくのか、今後の展開が注目されます。

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