ISVが生き残る道は「中立性」――InformaticaのCEOInformatica World 2010 Report

データ統合ソリューリョンを専業とするInformaticaは、この分野では数少ない独立系ソフトウェアベンダーとなった。大手ベンダーとの競争をどう勝ち抜いていくかについて、ソヘイブ・アバシ会長兼CEOが言及した。

» 2010年11月05日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 データ統合ソフトウェア大手の米Informaticaは11月2日から3日間、年次カンファレンス「Informatica World 2010」を米国ワシントンD.Cで開催した。基調講演の後に行われた経営陣とメディアとの質疑応答では、ソヘイブ・アバシ会長兼CEOが独立系ソフトウェアベンダー(ISV)としての同社の立場をどのように発展していくかについて説明した。

メディアの質問に答える米Infomaticaの経営陣。一番左はソヘイブ・アバシ会長兼CEO

 データ系ソリューション市場では、この1年ほどの間にベンダーによるビジネス分析(BI)やデータウェアハウス(DWH)といった製品やサービスに関する顧客企業への訴求が強まっている。金融危機を契機にしたリセッション(景気後退)によって、2009年は企業のIT投資が減少した。リセッションの状況から脱出を図った企業では再びIT投資を拡大させ、特にビジネスの展開を加速させるためのデータ系ソリューションに注目するようになった。

 この市場での中心的な存在となるのが米IBMや米Oracleなどの大手ベンダーと、InformaticaのようなISVである。大手ベンダーは、ISVの買収を通じてこの市場に対するポートフォリオを拡大させてきた。アバシ氏は、大手ベンダーの動向に合わせて、同社もポートフォリオの拡大に注力してきたと話す。製品やサービスの面ではライバルと互角に戦う競争力を持つが、今後もISVの立場を確立していくには、資本や戦略も不可欠な要素になる。

 アバシ氏は、同社が市場での競争を勝ち抜くキーワードとして、「中立性」を挙げた。大手ベンダーには単独で提供可能な製品が豊富にあり、ユーザーはベンダーの製品を統一することで、導入・運用コストを圧縮できるメリットを得られると考えがちである。しかし、買収などで取得した技術や製品を既存のものと統合することは容易ではない場合がある。ユーザーにとっては、この点がリスクになる。

 「大手だからといって、必ずしもすべての顧客ニーズを満たせるわけではない」とアバシ氏。また、データ系ソリューションは、ほかの製品よりもユーザーが多種多様な機能を求める傾向にあると言われる。この点でも、大手よりも小回りのきくISVの方が有利になると主張している。

 中立性をどのように維持していくかについては、「顧客にとってベストな技術を提供することが当社の価値の向上につながるその利益を株主に還元し、満足度を高めていく」(アバシ氏)と述べている。アバシ氏は2008年にカンファレンスで「データ統合の基盤にフォーカスしていく」と表明した。特定の分野に注力し続けることは、一見すると企業の成長性において伸びしろに欠くような印象を受ける。だが、アバシ氏はクラウドコンピューティング市場の拡大が同社の勝機になると強調する。

 クラウドコンピューティングは、企業のIT環境を容易に拡張できる点がメリットに挙げられる。企業のクラウド利用が広がれば、データを活用する領域も広がることになる。「GoogleやAmazon、salesforce.comのようなクラウドベンダーは、システム間でデータをつなぐミドルウェアの部分に踏み込まない」とアバシ氏。この部分に顧客企業に必要とされる同社の存在意義を見出している。

 「顧客にとってベストな技術を提供することが当社の価値の向上につながる」とのアバシ氏の主張は、経営者としてはオーソドックスなものである。だがデータ製品を取り巻く市場環境は、同氏の経営に対する自信を裏付ける状況になっているようだ。

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