クラウドコンピューティングの時代、高まる仮想化の重要度 ヴイエムウェアvForum 2010 Report

ヴイエムウェアの三木泰雄社長と米VMwareのトッド・ニールセン最高執行責任者(COO)がクラウドコンピューティング時代の事業ビジョンを提示した。

» 2010年11月10日 12時24分 公開
[唐沢正和,ITmedia]

 ヴイエムウェアは11月9日〜10日、国内最大級の仮想化&クラウドコンピューティングイベント「vForum 2010」を都内で開催した。9日の基調講演では、ヴイエムウェアの三木泰雄社長が冒頭挨拶で日本市場の事業概況を説明するとともに、米VMware社のトッド・ニールセン最高執行責任者(COO)が「From Virtualization to Cloud to“IT as a Service”」と題した講演を行った。

vmware01 ヴイエムウェアの三木泰雄社長

 三木氏によると、現在VMwareのサーバ仮想化製品は、国内で約6000社の顧客に利用されており、導入企業はさらに拡大しているという。2010年の国内の事業概況を振り返って三木氏は、「2010年上半期は前年同期比で102%の成長を達成することができた。製品展開としては、主力製品の新バージョンとして7月にVMware vSphere 4.1、9月にVMware View 4.5をリリース。認定制度のVMware Certified Professional(VCP)は、昨年末の2000人から今年9月末で3500人へと増大した。そして、1月からWebサイトで公開したVMware対応アプリケーションは380種類に達している」と、好調に事業が推移していることをアピールした。

 また同社では、今年6月から8月にかけて全国27都市で仮想化サミットを開催したが、予想を上回る3000人以上の参加者を集めたという。この結果を受け三木氏は、「仮想化の波が首都圏から地方・地域へ、また大手から中堅・中小企業へと確実に広がってきていることを実感した」と、仮想化市場の拡大に手応えを見せた。

 日本市場における今後のフォーカスエリアとしては、まず、顧客の“Journey to the Cloud”の推進と成功に向けて、コンサルティングサービスを強化する。2011年第1四半期には、顧客同士の交流をさらに深めることを目的に「VMwareユーザ会」を設立する計画だ。次に、中堅・中小企業の仮想化導入支援を強化するため、中堅・中小企業に特化したポータルサイト「IT価値創造塾」を開設し、パートナーソリューションとの組み合わせによる付加価値提案を支援していく。そして、新たなソリューションの提供として、VMware vCloud Directorによるクラウド構築の支援、vFablic製品群の投入によるプラットフォーム領域でのソリューション展開およびデベロッパー支援に力を注いでいく方針を明らかにした。

vmware02 日本市場における今後のフォーカスエリア

ハイブリッドクラウド戦略を推進

 三木氏の挨拶に続いて、米VMwareのニールセンCOOが「From Virtualization to Cloud to“IT as a Service”」をテーマに、同社のワールドワイドでのビジネス戦略を説明した。

vmware03 米VMwareのトッド・ニールセン最高執行責任者(COO)

 「現在、VMwareの仮想サーバは物理サーバの出荷を上回る勢いで伸びている。また、全世界の仮想アプリケーションの8割以上がVMwareのプラットフォーム上で稼働しているというデータもある。さらに、厳しい経済状況の中でも、今年は1000万台の仮想マシンが展開されると予測されており、ITに関わるさまざまな課題を解決するために仮想化の重要度は増していく一方だ」と、ニールセンCOOは仮想化市場の現状を分析。「そして、仮想化のさらなる進展によって、今後は、ITサービスの提供と利用に変革をもたらすクラウドコンピューティングの時代に入っていく。これこそが当社の掲げる“IT as a Service”の基本的な考えである」と、クラウドコンピューティング事業に向けたビジョンを示した。

vmware04 仮想化により実現するIT新時代

 具体的には、企業など組織内で運用されるプライベートクラウドと、一般利用向けのインターネットを介してアクセスするパブリッククラウドを接続し、両方のメリットを提供するハイブリッドクラウド戦略を推進していくという。ニールセン氏は、「当社の目指すクラウドコンピューティングは、現行の投資を無駄にすることではなく、むしろその投資を再活用していくことにある。ハイブリッドクラウドでは、相互運用可能な2個以上のクラウドを併用し、データやアプリケーションの可搬性を可能にする。これによって顧客は、自社のシステム状況に合わせて、柔軟にクラウドコンピューティングの導入モデルを選択できる」としている。

 一方で、ハイブリッドクラウドのような新しいIT環境を実現するには、解決すべき課題も多い。「特に、既存のアプリケーションや新たなエンタープライズアプリケーション、SaaSアプリケーション、そして既存のデータセンター、パブリッククラウドサービス、さらにはさまざまなデバイス端末まで、すべてを統合して、一貫性のあるセキュリティの高いシステム環境を構築する必要がある」と、ニールセン氏はハイブリッドクラウドの抱える課題も指摘する。

 この課題に対して同社では、(1)エンドユーザーコンピューティングの再検討、(2)アプリケーション開発の近代化、(3)インフラストラクチャの革新、という3つのソリューション分野にフォーカスを当てて取り組んでいくという。

 この中でもコアとなるのが『インフラストラクチャの革新』だ。この分野では、ストレージ、ネットワーク、管理、自動化、セキュリティなどの分野でもインフラストラクチャの革新を図っていく。また、『アプリケーション開発の近代化』では、Java開発/管理ツールのスプリングソースやvFabric製品群をはじめとした次世代アプリケーションの開発に必要なソリューションを積極的に展開していく。そして、『エンドユーザーコンピューティングの再検討』では、VMware Viewを中核としたデスクトップ仮想化事業をさらに拡充していく。

 最後に日本市場の展望についても触れ、「日本市場は、当社にとって非常に重要な市場である。過去2年間でスタッフは3倍に増加し、ローカルサポートのポリシーやアプローチも改善した。プロフェッショナルサービスも強化しており、日本市場には今後も多くの投資を行っていく」と、ニールセン氏は日本市場でのさらなる事業拡大に意欲を見せた。

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