メール編 メールを保管する――アーカイブのススメ今すぐ始めたい中小企業のセキュリティ対策チェック(2/2 ページ)

» 2010年12月17日 08時00分 公開
[新倉茂彦,ITmedia]
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容易に始められるアーカイブの方法

 メールの保存を考えた場合、まずはPCの中でしようと思いがちです。しかし、万が一機械的なトラブルやHDDの故障が発生してしまった場合などは、データを戻せないことがあります。仮に戻せたとしても膨大なコストがかかります。

 そこでお勧めしたいのが、Webメールの利用です。最近は、スマートフォンなど携帯電話とPCの中間的な端末も増え利用範囲も拡大してきましたが、WebメールはPCに限ることなく、さまざまな端末から利用できるメリットもあります。

 Webメールには多種多様なサービスがあり、その多くが無料で利用できます。プロバイダーが提供するものから携帯電話会社が提供するもの、Webサービスの1つのメニューとしてなど、その機能もさまざまであり、会社のセキュリティルールに沿ったものを利用することで、業務効率が格段にアップします。Webメールには以下のような特徴があります。

  1. 携帯でも自宅のPCでも「場所を選ばない」
  2. 携帯やスマートフォンにメールを転送することで「端末を選ばない」
  3. 緊急時や災害時であっても十分に使える「必要最低限以上の機能」

 メールのアーカイブとしても無料で簡単に利用できるGoogleのGmailを活用するケースを考えてみます。Gmailは、利用者が特に意識しなくともデータ記憶容量が数ギガバイトもあります。メールをやりとりすると同時にその内容がバックアップのように保存されていきます。データはインターネット上に保存されています。

 私も以前はメールソフトを利用していましたが、現在ではWebメールを活用しています。メールソフトは、今もデータを長期保存するため週1回利用していますが、データを見ることはほとんどありません。

 メインで使うメールがWebに移行していくと、送信もGmailから行うようになりました。これによって、受信メールだけでなく、送信メールも含めて、そのデータがアーカイブとして残りますし、検索対象にも含まれるようになります。端末が異なっても利用できる機能にほとんど差異はありません。前回の履歴も引き継がれますので、PCでメールソフトを利用していたころに比べて、仕事の効率は格段に向上しました。

 Webメールによるアーカイブの活用メリットは、次のようなものです。

1 すべてのメールに対して全文検索が瞬時にできる

 従来使っていたメールソフトでは、全文検索に10分以上かかりました。Gmailはインターネット上のサーバ能力に依存するものなので、利用しているPCのスペックが低くてもすぐに検索ができます。

2 迷惑メールのフィルタリング性能が高い

 迷惑メールをブロックするフィルタをいろいろと使ってみましたが、Gmailのものは十分に使えます。かつては、まれに重要なメールが「迷惑メールフォルダ」に紛れ込みましたが、最近はほとんどないように感じます。

3 件名やアドレスでメールにラベルをつけられる

 メールソフトに見られるフォルダ分け機能とは異なりますが、Webメールでもラベル機能で同様に利用できます。重要なデータをラベルという印をつけることで簡単に分類できます。また、一時的に重要なデータにチェックを付ける「★マーク」もあり、後で必要なデータを探すのが楽になりました。

 従来のメールソフトであれば、これらの仕組みを実現するのに莫大な手間とコストがかかりましたが、今ではすべての機能を無料で利用できます。かなりの高機能を持っていますが、初心者からプロの方まで簡単に使えるものです。メールアーカイブは、その機能が利用できる環境を整えてこそ、はじめて活用できるようになります。メールを探すことに費やす時間コストを考え、Webメールのような手段で業務効率を高めていきたいものです。

 PCの中にあるデータは、PCでなければ見ることができません。しかしWebメールはどこからでも、どのような端末でもアクセスして利用できます。その半面、端末を紛失したり、盗難に遭ってしまったりした場合に、第三者に不正利用されてしまう危険があります。

 Webメールのようなサービスは便利なだけに、その中にあるデータを守ることに気を配りたいものです。しかし、守る手段はサービスを利用するときに行うIDとパスワードによる認証だけです。端末を制限するなどWebメールを利用する環境を狭くすることで、セキュリティは高まるかもしれません。しかし、Webメールの使い勝手も下がります。どちらが良いのかは、利用する環境やルールに依存することでしょう。

 いずれも、サービスの入口が広いか狭いかの違いだけであり、入口となる認証に必要なIDとパスワード管理は必須事項です。以前に取り上げたパスワードの作り方を参照され、強いパスワードにするよう見直してみてください。


 中小企業のセキュリティ対策は、その必要性を理解していても、「実際には効果がよく分からない」などと理由をつけてコスト削減の対象になっているケースが見受けられます。しかし、最近はニュースでも情報管理の話題が増えている状況です。セキュリティ対策は「基本を忠実に行う」ことが最も重要です。コストを掛けなくとも中小企業が始められる身近なセキュリティ対策はたくさんあります。まだ実践していない企業はすぐに取り組んではいかがでしょうか。

新倉茂彦(にいくら しげひこ)

有限会社ティーシーニック代表取締役、セキュリティプロデューサー、MBA(経営情報学修士)

コンピュータセキュリティの論理的、物理的分野で経験を積み、ITリスクマネジメントに5年間従事。現在は「狙う側の視点」から企業防衛をトータルサポートする情報漏洩対策・情報セキュリティのコンサルティングを提供。オルタナティブ・ブログ「新倉茂彦の情報セキュリティAtoZ」も執筆中。


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