2011年の企業のIT投資動向――サーバ仮想化やアプリケーションが重点分野に

ガートナー ジャパンが発表した国内企業の2011年度のIT投資動向は、2010年度に比べて1.0%程度の増加が見込まれ、緩やかな回復基調にあるという。

» 2011年02月02日 13時29分 公開
[國谷武史,ITmedia]
2010年度および2011年度の新規・追加投資の主要分野(複数選択)。注1:2010年度から2011年度にかけての新規・追加投資の主要な案件について、上記選択肢から複数回答可として選択してもらった調査結果である。数値はすべて805社の有効回答企業による選択率を示す。注2:図の赤い矢印は2008年と2009年調査に比べて選択率(ニーズ)が拡大した分野、オレンジの矢印は、話題性や期待の割にニーズが小さいクラウド関連の分野を示す。[出典:ガートナー(ITデマンド・リサーチ)/調査:2010年11月]

 ガートナー ジャパンは2月2日、国内企業のIT投資動向に関する最新調査の結果を発表した。2010年度のIT投資額は2009年度とほぼ同規模だったが、2011年度は全体で1.0%程度の増加を見込む。既存システムの維持費が減少し、新規投資が増加傾向にある。

 調査結果によると、新規・追加投資の主要分野ではサーバ仮想化とモバイル環境の整備、アプリケーション投資の再開傾向が明らかになった。特に従業員数2000人以上の大企業でこれらのニーズが高く、IFRSへの対応や運用管理ソフトウェアへの投資意欲も高まっているという。

 サーバ仮想化は、調査対象の企業全体でニーズが高まりつつあり、2008年調査の11%から19%に増加した。特に大企業では43%に上った。利用率は、従業員数500〜1999人の中堅企業で40%を超え、大企業では70%近くに達する。だが、全サーバに占める仮想環境の割合はまだ低く、今後も新規・追加の投資の拡大が予想される。仮想環境と物理環境の混在運用によって管理が複雑化し、運用管理ソフトウェアのニーズも高い。

 モバイル環境の整備では、2009年調査まで5〜6%程度しかなかったが、最新調査では10%にまで拡大した。特に大企業では、2009年調査の7%から18%に拡大した。ガートナーでは、モバイル端末の採用に加えて、今後はセキュリティ管理やアプリケーション、データ通信のニーズ拡大が見込まれるとしている。

 アプリケーション分野は、2008年の金融危機によって、多くの企業が投資を抑制・延期してきたが、2011年は投資を再開する意欲が高まっているという。「パッケージ・アプリケーション」では2009年調査の19%から28%、「アプリケーション開発の外部委託」では同14%から22%、「IFRS対応」では同9%から25%にそれぞれ拡大した。今後、財務・会計管理アプリケーションの改修やERPの導入・アップグレードにつながる可能性があるという。

 調査では、向こう3年間で重点投資すべきアプリケーションについても尋ねた。その結果、大企業では「財務・会計管理」「購買・調達管理」「営業支援(SFA)」「マーケティング支援」「ビジネス分析(BI)」「SCM」で、投資意欲の高まりがみられた。

 一方で「クラウドサービス」の関心は極めて高いものの、実需はまだ小さいとしている。費用対効果やセキュリティなど多くの懸念事項があり、これらの問題が解決されなければ需要拡大が見込めない。同社では需要拡大のタイミングを2014年以降とみている。

 またMicrosoft Windows 7の導入は、回答した企業が保有しているPC全体の1%にとどまった。その多くが試用段階にあり、今後1年間で11%程度になると予想する。65%の企業は2012年末までにWindows 7に移行する予定だと回答した。

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