今スグから未来まで――節電を推進する施策や技術が多数登場Interop Tokyo 2011 Report

この夏に予想される電力不足から、企業では節電の取り組みが急を要する課題だ。Interop Tokyo 2011では節電を支援する施策や製品、技術が多数紹介されている。

» 2011年06月09日 07時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 東日本大震災をきっかけに、この夏は東日本地域で深刻な電力不足が予想されている。大口需要家に対する使用電力の15%削減の政府要請も近く実施される見込みだ。6月7〜10日に千葉・幕張メッセで開催中のInterop Tokyo 2011では、節電をテーマにした講演とともに、省エネを強調した製品や技術が多数出展されている。

急を要するデータセンターの節電

 震災とその直後に実施された計画停電は、企業のIT環境にも大きな影響を及ぼした。特にデータセンターではサービスの中断など深刻な問題の発生が今後も予想されるだけに、西日本地域へのシステムの移転といった対応に追われているところが少なくない。

 日本データセンター協会による講演では、企画グループの泓宏優氏が、すぐにでも始められるデータセンターの節電術を紹介した。同協会では節電方法をまとめたマニュアルをWebで一般にも公開している。

 重要な情報システムが幾つも稼働するデータセンターは、節電のためとは言え、実際には簡単に止めることができない。「移転するにしても西日本地域にはもう余裕がない。電力使用の状況を可視化して、できるところから節電していくのが現実的な方法」(泓氏)という。

 日本データセンター協会は、節電対策を「物理的な設備」「ソフトウェアの機能」「ファシリティ」の3つの点で実施することを推奨している。

 まず「物理的な設備」では、可能であればサーバの電源ケーブルをコンセントや電源タップから抜いたり、ブレーカーを遮断したりと、根本的に通電しないようにする。また、配線ケーブルはなるべく取りまとめて通気性を高め、ファンやフィルタを清掃して冷却効率を高める。ベンダーへの確認が必要だが、予備電源系も可能なものは取り外すことが推奨されるという。

 また、あまり使用していないサーバなどのオプションのボートを取り外す、HDDからSSDに換装して稼働部分を減らすといった方法もある。ネットワーク帯域の使用を制限することも節電につながる。

 「ソフトウェアの機能」では、発売時期が比較的新しいサーバやストレージ製品に搭載されている省電力設定の機能を活用する。多くの製品では推奨の省電力設定が用意されており、これを有効にするだけでも大きな節電効果が見込まれる。また、「パワーキャッピング」という機能がある場合、CPU使用率の上限を低めに設定することで、システムを稼働したままでも一定の節電効果が得られる。

 「ファシリティ」では、通常では低めに設定されているマシンルームの室温を最高で40度程度に引き上げる方法がある。機器の動作に影響が出ないようベンダーとの調整が必要だが、室温を高めることで冷却装置の使用電力を抑制できる。このほかにも、室外機の周辺に水を噴霧して気温を下げ、空調機器の効率を高めるといった方法もある。

 日本データセンター協会では、会員以外の企業にも自主的な節電を呼び掛けていくとともに、経済産業省に対してデータセンターが安定して稼働できるための施策を要望しているという。

細やかな操作で節電する

 Interop Tokyo 2011では、IT機器の節電を支援する製品や技術の出品が目立つ。

 例えばNECブースでは、6月6日に記者発表された「Express5800シリーズ」サーバでの節電対策を提案している。新製品では内部装置の配置を工夫することで通気性を高めるとともに、装置内の温度が40度でも安定して動作するようにした。

冷却ファンを傾けたり、マザーボートやHDDを通気性が高まるよう配置することで、40度の室温でも安定した動作を維持できるという

 また、システムでの使用電力状況を可視化したり、制御したりできるツールも複数出品。サーバの稼働時間を事前に指定することで必要以上に動作させないようにする方法や、プロセッサが使用できる電力をワット数単位できめ細かく設定しておくことで消費電力を抑える方法などを紹介している。

蛍光灯型やスポット型のLED照明器をPoE対応スイッチで点灯できる。デモンストレーションではスマートフォンにインストールしたリモコンアプリを操作していた

 ベンチャーパビリオンにブースを構えるサイバートランスジャパンは、Power over Ethernet(PoE)給電とバッテリ駆動が可能なスイッチを利用してのLED照明のコントロール技術を披露した。

 この技術では、通常時でもPoEによってLED照明を点灯することで消費電力を下げることができ、照度を変えることで、さらなる節電が可能だという。アダプターを使用すれば、1つのポートで複数のLED照明器をコントロールすることができ、センサーを組み合わせることで、自動的に明るくしたり、暗くしたりもできる。

 ブースの担当者は、「IP技術で室内のさまざまな設備をきめ細かく制御できるようになるので、環境面からもこの技術を普及させていきたい」と語っている。

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