Oracleとキヤノングループのグローバル協業は、クラウド時代に向けたドキュメントソリューション分野での合従連衡が活発になってきた証しともいえそうだ。
米Oracleとキヤノン、キヤノンITソリューションズが9月26日、オフィス向けソリューション分野でグローバル協業すると発表した。第一弾として、複合機などのイメージング機器と業務アプリケーションを連携させるためのサービス指向アーキテクチャ(SOA)をベースにしたミドルウェア群を展開する。
Oracleとキヤノングループがまず取り組む協業内容については、既報の関連記事を参照いただくとして、ここでは両社が今後、この協業で期待する効果の1つとして挙げている「クラウドサービスの強化と新サービスの創出」に注目し、クラウド時代に向けたドキュメントソリューション分野での合従連衡について探ってみる。
両社の発表では、キヤノンのオフィス向けクラウドサービス基盤である「Canon Business Imaging Online」の要素技術開発において、Oracleのミドルウェア技術をベースとした共同開発を行っていくとしている。これはつまり、キヤノンのクラウドサービスにおいて、Oracleのミドルウェア技術をPaaSとして採用することを明らかにしたといえる。
キヤノンはCanon Business Imaging Onlineを7月13日に発表したばかりだが、8月3日には富士通とのグローバル協業を発表し、このクラウドサービス基盤を、富士通がクラウド基盤として展開している「FGCP/S5」から提供するとした。
具体的には、キヤノンが富士通のデータセンターを使ってドキュメント管理などのオフィス向けクラウドサービスをグローバル展開するとともに、、富士通もキヤノンのサービスを販売するというものだ。つまりは、キヤノンのPaaS/SaaSが富士通のIaaSに載る形となる。そのキヤノンのPaaSに今回、Oracleのミドルウェア技術が採用されたことになる。
キヤノンのクラウドサービスは今後、IaaSは富士通、PaaSはOracleの技術を基に展開していくのか。記者会見でこう問うたところ、キヤノン常務取締役 映像事務機事業本部長の中岡正喜氏は、「富士通のクラウド基盤を使ってグローバル展開するのは発表した通りだが、その上に載るPaaS/SaaSは顧客ニーズに対応するためにも幅広く展開する必要がある。今回のOracleとのグローバル協業もその方針に則ったものだ」と語った。
だが、今回の協業によって、Oracle−キヤノン−富士通の3社連携が一層深まるのは確かだ。しかもOracleと富士通も長年の戦略的協業関係にある。クラウドサービスにおけるグローバルな一大勢力に発展する可能性もありそうだ。
では、その対抗勢力はどこか。ドキュメントソリューション分野を軸にみると、2009年1月に戦略的提携を発表した米IBMとリコーの陣営が挙げられるだろう。さらにこの分野では、長らく巨大な存在として君臨してきた米Xeroxおよび富士ゼロックスの今後の動きも注目される。
こうしてみると、キヤノンはクラウド分野で富士通およびOracleとグローバル協業を図り、長年の競合相手であるリコー、Xeroxに対して大攻勢に打って出たようにも受け取れる。と同時に、今回の協業はキヤノン、そして富士通も合わせて、日本企業がクラウド事業のグローバル展開をどう図っていけばよいのか、を示唆する動きにもなりそうだ。
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