金融危機を読みきったビジネスアナリティクスIBM Information On Demand 2011 Report(2/2 ページ)

» 2011年10月25日 17時40分 公開
[伏見学,ITmedia]
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全社員にデータ活用を徹底

 さらに、情報活用によって企業が競争優位に立つためには、大量のデータを蓄積、加工、分析するだけにとどまらず、データに洞察を加えて将来を予測し、行動に移さねばならない。まさに、本イベントのテーマ「Turn Insight into Action(洞察を行動に変える)」を指しているのである。

 この情報活用における一連のプロセスを取り入れることで、世界的な金融危機を脱した企業がある。アトランタに本社を構える米SunTrust Banksだ。同社は、フロリダ州やジョージア州を中心に1661の支店と2919台のATMを持つ全米最大規模の銀行である。同社は2006年にIBMのデータウェアハウス(DWH)とビジネスアナリティクス(分析)ソリューションを導入。これによってリスクを事前に予測しリーマンショックを乗り切るとともに、現在でも事業を着実に成長させている。

米SunTrust Banks シニアバイスプレジデントのポール・エドミストン氏 米SunTrust Banks シニアバイスプレジデントのポール・エドミストン氏

 以前のSunTrustは、例えば、ある事業のレポーティングをする際、人員を大量に導入して社内に分散するデータをかき集め、100ページを超える“誰も読みたくない”レポートを作成していた。データ活用に関するツールやプラットフォームも脆弱だった。同社のシニアバイスプレジデントで、Corporate Business Intelligence & Analytics Groupのポール・エドミストン氏は「必要な情報を発掘するのに、実に業務の4割もの時間を割いていた」と振り返る。ビジネス分析ソリューションを活用し効率的なレポーティングを実現することで人材リソースの最適化が可能となった。

 加えて、2万8000人の社員すべてにデータの重要性を訴え、データ活用を推進することで、データに対する深い理解や洞察を持つようになったという。その結果、作成されるデータやレポートの質が向上するとともに、組織を超えて一人一人がデータを「共通言語」とするようになった。「手間のかかることだったが、やるべき重要なことだった」とエドミストン氏は力を込める。

 この企業変革が実を結んだのが、サブプライムローンやリーマンショックなど一連の金融危機である。「倒産などの危機が連鎖する恐怖があり、多くの企業は実体が分からずにやみくもな施策を打っていたが、SunTrustは日常的にデータから洞察を得て市場を分析していたので、その恐怖の実体やリスクの限界を明確に測定できたのだ」と、シニアバイスプレジデントで、Risk Management & Technology担当のH・P・ブナエス氏は胸を張る。同様に、自動車販売業者が相次いで破たんした2009年の自動車産業の不況なども乗り切ったという。

「ビジネス分析を企業経営に取り込んだことによって、情報から顧客の行動や市場の動向が見えるようになった。それに基づき、スマートな決断ができるようになったのだ」(エドミストン氏)

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