Citrix、クラウド戦略の網羅的なアップデートを披露Citrix Synergy 2011 Barcelona Report(2/2 ページ)

» 2011年10月27日 18時19分 公開
[渡邉利和,ITmedia]
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仮想デスクトップのコスト

 次にPrivate Cloudの“内部”位置づけという話題が披露された。仮想デスクトップのコストが大幅に軽減されるというもので、同社のソリューションは、仮想化されたデスクトップのコストが、物理的なPCのコストを下回るという。

 従来、仮想デスクトップ環境には運用管理の効率化やセキュリティなどのメリットが挙げられるものの、コストもかかるというのが一般的な認識であった。しかし、HDX System-on-Chipを搭載したシンクライアント端末や、Follow-Me Data Fabricの活用によるローカルストレージの削減といった努力を組み合わせることで、クライアントのハードウェアやサーバおよびサーバソフトウェアのコストを足し合わせても、物理的なPCのコストを下回ることができるという。同社はこの部分に関連して、「VDI-in-a-Box」という製品も発表した。

 VDI-in-a-Boxは、従業員数1000人以下の中小企業向け「ホステッドVDI専用アプライアンス」という位置づけの製品になる。これも元々は、今年6月に買収した米Kavizaの製品であるがだが、Citrixはバージョンアップを行った上で、年内のリリースを予定している。日本でも21012年にはインタフェースを日本語化した製品として発売できるよう準備を進めている段階だという。

仮想デスクトップ環境と従来型PCのコスト比較。ここでは運用管理コストなどは明示せず、仮想デスクトップインフラ(VDI)を実現するために必要な端末、ネットワーク、サーバ、ソフトウェアの価格に注目している。競合他社のVDIソリューションはPCより高くなるが、Citrixは安価にできることを来場者にアピールした

 Citrixは積極的なM&A戦略によって、クラウド関連製品を急速に充実させてきた。この取り組みで印象的なのは7月に発表されたCloud.comの買収だが、それ以外にもさまざまな製品を保有する企業各社を買収しており、Synergy Barcelonaではその成果が一挙に公開された形となった。同社事業の軸は、企業IT市場でも圧倒的な強みを持つクライアント仮想化技術である。事実上どのような端末にも対応する「Citrix Receiver」とサーバソフトウェアの組み合わせたリモートアクセスの実現は、他社が容易に追いつくことができない強みとなっている。

 クラウド環境に注目すると、どうしてもサーバやデータセンター側に視点を置いた話題になりがちだが、実際にはクラウド環境にどうやってアクセスし、クラウドで提供されているサービスをどう使っていくのかという、クライアント側のコネクティビティが重要になる。同社はこの強みを生かし、不足する要素をM&Aなどによって確実に埋めていくという戦略をとる。クラウド化に向けて急速に変化しつつあるIT業界の中でも、ユニークな立ち位置で自社のポジションを確立しつつあるようだ。

Cirix ReceiverのデモでWindows 8の「Metro」インタフェースを操作。サーバ側で実行されているWindows 8のスクリーンが手元のデバイスに転送されている。こうしたリモート接続環境でも既にマルチタッチインタフェースに対応済みだという。実際に画面を弾くようなアクションによって横スクロールさせたり、マルチタッチによる画面の拡大・縮小や回転といった操作を実演して見せ、仮想化されたリモート接続環境でもWindows 8の新しいユーザーインタフェースの使用感が損なわれないことを示した
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