次にPrivate Cloudの“内部”位置づけという話題が披露された。仮想デスクトップのコストが大幅に軽減されるというもので、同社のソリューションは、仮想化されたデスクトップのコストが、物理的なPCのコストを下回るという。
従来、仮想デスクトップ環境には運用管理の効率化やセキュリティなどのメリットが挙げられるものの、コストもかかるというのが一般的な認識であった。しかし、HDX System-on-Chipを搭載したシンクライアント端末や、Follow-Me Data Fabricの活用によるローカルストレージの削減といった努力を組み合わせることで、クライアントのハードウェアやサーバおよびサーバソフトウェアのコストを足し合わせても、物理的なPCのコストを下回ることができるという。同社はこの部分に関連して、「VDI-in-a-Box」という製品も発表した。
VDI-in-a-Boxは、従業員数1000人以下の中小企業向け「ホステッドVDI専用アプライアンス」という位置づけの製品になる。これも元々は、今年6月に買収した米Kavizaの製品であるがだが、Citrixはバージョンアップを行った上で、年内のリリースを予定している。日本でも21012年にはインタフェースを日本語化した製品として発売できるよう準備を進めている段階だという。
Citrixは積極的なM&A戦略によって、クラウド関連製品を急速に充実させてきた。この取り組みで印象的なのは7月に発表されたCloud.comの買収だが、それ以外にもさまざまな製品を保有する企業各社を買収しており、Synergy Barcelonaではその成果が一挙に公開された形となった。同社事業の軸は、企業IT市場でも圧倒的な強みを持つクライアント仮想化技術である。事実上どのような端末にも対応する「Citrix Receiver」とサーバソフトウェアの組み合わせたリモートアクセスの実現は、他社が容易に追いつくことができない強みとなっている。
クラウド環境に注目すると、どうしてもサーバやデータセンター側に視点を置いた話題になりがちだが、実際にはクラウド環境にどうやってアクセスし、クラウドで提供されているサービスをどう使っていくのかという、クライアント側のコネクティビティが重要になる。同社はこの強みを生かし、不足する要素をM&Aなどによって確実に埋めていくという戦略をとる。クラウド化に向けて急速に変化しつつあるIT業界の中でも、ユニークな立ち位置で自社のポジションを確立しつつあるようだ。
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