OSは“10年前のお古”で良いのか?さよならWindows XP

Windows XPが登場した2001年10月からちょうど丸10年が経過した。クライアントに深く、深く浸透したOSも、いよいよ本当に終焉の時を迎えようとしている。これまでOSの移行に慎重だった企業も、これ以上遅れると、リスクが高まる一方なのだ。

» 2011年10月28日 08時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]

Vistaの反省を踏まえたWindows 7

 Windows XPは、16ビットOS環境との互換性を引きずっていたWindows 95/98系と、当初より32ビットOSとして設計されたWindows NT系を統合したOSとして、2001年10月に発売された。Windows 95/98系の使いやすさ、Windows NT系の安定さ・堅牢さを両立させたOSとして、瞬く間に普及。5年後の2006年11月に後継バージョンであるWindows Vistaが登場しても主役を譲ることなく、10年の長きに渡ってクライアントOSのトップの座に君臨し続けてきた。

 Windows XPからWindows Vistaへの移行は、はっきり言って大失敗だった。周辺機器やアプリケーションの互換性に問題があるものが多く、移行にコストがかかると見た企業の情報システム部門は明らかな拒否反応を示した。また、性能向上を示すデータがマイクロソフトから公表されても、結果的には豪華になったインタフェースと多機能さに相殺され、体感的なパフォーマンス改善は期待できなかった。

 そこで、多くの企業はクライアントPCのハードウェアをリプレースする際に、一つ前のバージョンであるWindows XPを選択するか、Windows Vistaライセンスのダウングレード権を利用してWindows XPを導入することを選択した。どちらにしても、Windows Vistaは選ばれなかった。こうした風評が広まり、結局Windows Vistaには「ダメOS」の烙印が押されてしまった。

 マイクロソフトもユーザーの評判には抗えず、Windows XPのサポート期間を何度か延長。現在は、コンシューマ向けのHome Editionも含め、延長サポート期間が2014年4月までになっている。

 こうしたWindows Vistaへのアップグレードの反省を踏まえ、マイクロソフトが急いで取り組んだのが、Windows 7の開発だった。Windows 7は、Windows Vistaをブラッシュアップするとともに、Windows XPからの移行を促すための互換性を重視して作られた。こうしてWindows Vistaが登場して3年にも満たない2009年9月に、Windows 7が発売されることになった。

Windows XPでは使えない最新機能が続々

 2009年9月に満を持して発売されたWindows 7だったが、Windows XPからの移行は、思うように進んでいない。度重なる経済問題、天災などにより、企業のIT投資が鈍っているのに原因があるかもしれない。また、ユーザー側に残る、Windows Vistaでの失敗の記憶が影響しているのかもしれない。

 しかし、この10年間にハードウェアは目覚しい進化を遂げ、企業システムを支える機器の機能・性能もどんどん向上していった。それらの機器の機能・性能を十分に引き出すには、最新のソフトウェアが必要だ。もちろん、クライアントPCも例外ではない。すでに開発が止まってしまっているWindows XPでは、ハードウェアを生かし切れないのだ。

 PCベンダーによっては、最新のPCでWindows XPにダウングレードした場合、無線LAN機能が非対応、プラグ&プレイ対応ディスプレイが非対応、ブルーレイディスクが非対応など、ほとんどの新しいハードウェアの新機能をサポートしていない場合もある。

 機能面だけでなく、性能に影響することもある。例えば、Windows XP以降に登場したSATA(Serial ATA)2で採用されたSATAネイティブのインタフェース仕様であるAHCIモードは、Windows XPには対応していない。したがって、そのままの状態ではAHCIモードのハードディスクを認識することができず、従来のStandard ATAモードで起動させるか、マザーボードベンダーから提供されているドライバを組み込むしかない。ドライバを任意で組み込まない限り、SATA2本来のパフォーマンスを発揮させることはできないわけだ。ハードディスクにはほかにも、Windows XPでは2.19TBを超えるドライブを認識できないという問題もある。

 それでも、企業で使うクライアントPCならば、最新のハードウェア機能を使わなくてもまったく問題ないと考える企業も少なくない。ところが、Internet Explorerの最新版であるIE9がWindows XPをサポートしないのをはじめ、最新のGoogleMapがWindows XP非対応になるなど、“切り捨て”が徐々に始まっている。いずれも、Windows XPが対応できない最新のグラフィックス機能が使えないことが、Windows XPに対応しない理由だ。

 そして、Windows XPに引導を渡そうとしているのが、サポート終了の問題だ。前述のように、2014年4月まではサポート延長が決定されているものの、すでにセキュリティ更新プログラム(脆弱性に対するセキュリティパッチ)以外の提供は終わっている。セキュリティ更新プログラムの終了も、そろそろカウントダウンが始まるところまできた。これについては、次回以降の本連載で詳しく解説する。

Windows 7にすれば消費電力量は半分に

 サポート終了まであと2年半。そんなに余裕があるなら、まだ考える必要がないと思うなかれ。実は、Windows XPを使い続けると、運用コストが余計にかかるというレポートが出されているのだ。

 日本マイクロソフトは2011年5月、財団法人電力中央研究所の協力の下、各種Windows PCの消費電力を測定した。検証用PCは、Windows XP、Windows Vista、Windows 7の各OSが主流として販売されていた頃の代表的な売れ筋モデル。レポートでは、デスクトップPCとノートPCをそれぞれ用いた検証結果が報告されている。

財団法人電力中央研究所の協力の下、Windows XP、Windows Vista、Windows 7の各OSを搭載したPCの消費電力が検証されている

 まず、待機時の消費電力についてだが、レポートによるとWindows 7がプリインストールされている最新デスクトップはWindows XP世代のデスクトップに比べ、消費電力量が約半分だという。また、業務開始前の起動、業務終了後のシャットダウンの消費電力については、消費電力量が約2倍も違っている。この検証結果は、ハードウェアをリプレースするだけでも、節電効果があるというPCベンダー各社の主張を裏付けている。

 また、アプリケーション利用時の消費電力量も平均で約2倍もの差があり、つまるところWindows 7に置き換えれば、クライアントPCにかかる毎月の電力消費量は半分になるということだ。

 震災による電力不足の影響で、2011年7月から9月まで電力使用制限令が発令され、今夏は節電対策が大々的に注目された。多くの企業、国民の努力により、電力供給が逼迫する事態は免れたが、ここで安心することはできない。冬季には暖房需要により電力消費量が高まるし、来年も夏は必ずやってくる。節電対策とコスト削減の一石二鳥を狙うためにも、Windows XPからWindows 7へのバージョンアップへの検討は、今こそ必要なのだ。

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