インフラ仮想化製品としてCitrixが手掛ける「XenServer」。製品戦略での“基盤”でもある同製品の位置付けやエンタープライズ市場での展開などを聞いた。
米Citrix Systemsは5月9日から3日間、米国サンフランシスコで年次カンファレンス「Citrix Synergy 2012」を開催した。会期中、同社のマーケティング&戦略担当バイスプレジデントのミック・ホリソン氏に同社の製品戦略について聞く機会があったのでご紹介したい。
―― 今回のカンファレンスでは基調講演を含めてXenServerに関する言及が全くありませんでした。戦略に変化があったのでしょうか。
ホリソン XenServerの開発・改良は今後も継続します。XenServerが強化されることは、Citrixの多数の製品に競合優位性を加わることになるからです。例えば、NetScaler上でXenServerを動かす「SDXプラットフォーム」は、1台の物理アプライアンス上で多数の仮想アプライアンスを稼働させている。XenDesktopにはデスクトップ仮想化のために最適化されたハイパーバイザとしてXenServerが組み込まれています。Citrixの製品戦略にとってXenServerが重要であることは明白ですし、今後も積極的な研究開発を続けていきます。
その一方、ビジネス面ではXenServerより上位層にあるXenDesktopやXenAppの方が業績に直結しており、大きな存在であることは間違いありません。ユーザーに向けたメッセージとして、これら主に取り上げていくことになるでしょう。XenServerプラットフォームの革新に向けた努力は、これからも従来通りに続けていきますが、商品としてのパッケージングや価格など面は上位層のアプリケーションやサービスが前面に打ち出される形になります。
現在、Citrixのインフラ層での開発モデルはRed Hatが確立したオープンソースビジネスモデルと良く似たものになっています。オープンソースコミュニティとの密接な協調関係に基づいて開発されたソフトウェアに、Citrixが独自の付加価値を加えてユーザーに提供していく形です。例えば、Citrix CloudPlatformはオープンソースコミュニティによって開発されるApache CloudStackをベースとしており、XenServerもオープンソース版Xenをベースになっています。CloudPlatformの上に、さらにCloudPortalなどの商用製品を構築することもあれば、CloudPlatformやXenServerに対するサポートやサービスの提供もCitrixのビジネスとなっています。
―― Citrixのクラウド/仮想化関連製品は、クラウド事業者やサービスプロバイダーには受け入れられているものの、一般のエンタープライズユーザーの間では仮想化インフラとしてはVMwareの採用が目立ちます。Citrixの今後のエンタープライズ市場に向けた戦略はどのようなものになるのでしょうか。
ホリソン Citrixのクラウドや仮想化の製品がエンタープライズ市場に浸透して行く過程は、NetScalerで起こったプロセスを繰り返す形になると思います。NetScalerは、AmazonやApple、Googleなど、クラウド市場をリードするような世界でもトップレベルの大規模なクラウド環境にまず採用されました。その後に大規模な環境で培った経験やノウハウを反映する形でエンタープライズ市場向けの機能や使い勝手を磨き上げ、エンタープライズ市場にも受け入れられていったのです。
NetScalerと同様にCloudPlatform(Apache CloudStack)も、まずはサービスプロバイダー市場で受け入れられ、シェアを獲得しているという段階です。この実績を踏まえて、今後はエンタープライズ市場でのシェアも伸ばしていけるでしょう。もちろん、現時点で全てのエンタープライズユーザーがサービスプロバイダーレベルの大規模感強化や拡張性を必要としているというわけではありません。それでも一部の企業は将来の成長を見越して、あらかじめCloudPlatformを選ぶという動きが始まっています。時間をかけなから段階的に市場への浸透が進み、シェアが拡大していくと考えています。
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