現場と現物に立脚したモノ作りで社会イノベーションを実現日立イノベーションフォーラム 2012 リポート

日立製作所の中西宏明執行役社長は、「日立イノベーションフォーラム 2012」の基調講演で自社の海外事業やモノ作りについて語った。

» 2012年07月19日 17時06分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 日立グループは7月19日〜20日の日程で、プライベートイベント「日立イノベーションフォーラム 2012」を開催している。初日の基調講演では、日立製作所執行役社長の中西宏明氏が「日立グループが実現する社会イノベーション」と題したスピーチを行った。

日立製作所 執行役社長 中西宏明氏 日立製作所 執行役社長 中西宏明氏

 日立が重視しているのは、鉄道や電力、水道といった社会インフラ関連事業分野と、情報技術とを組み合わせた「社会イノベーション事業」だと中西氏は言う。

 「同フォーラムのメインテーマは『情報活用が加速する社会イノベーション』。ITと社会インフラの融合により、例えば、スマートシティなど社会の変革が可能になる。これからアジアは100万人都市を20年ほどでいくつもつくろうとしている。100万人都市は世界的にも決して多くはないし、欧州の100万人都市は何百年もの歴史をかけてできてきたもの。それが、アジアでは急激につくられようとしている。都市化にはさまざまな功罪があり、全体最適化が重要。そのためには事態が正しく把握できることが求められ、ITやセンシング技術が大きな役割を果たす」(中西氏)

スマートシティには高度な制御技術やビッグデータ活用などが重要な要素となる スマートシティには高度な制御技術やビッグデータ活用などが重要な要素となる

 同社の海外展開について、中西氏は「『(日立の列車は)海外では売れないよ』との声もあったし、欧州市場は既にメジャープレーヤーが抑えており参入障壁は非常に高かったが、今では日立の作った高速鉄道が英国でロンドンからドーバー海峡トンネルを結ぶ路線を走っている。欧州本土へのアクセスだけでなく、オリンピックのメイン会場へのアクセスにも使われる重要な路線だ」と、鉄道事業の一例を紹介する。

日立が参入に成功した英国の高速鉄道 日立が参入に成功した英国の高速鉄道

 またストレージ事業も、今や海外での売上高が全体の90%を占めるまでになり、グローバル展開に成功した事業の1つだ。ストレージ仮想化技術などを業界に先駆けて取り組み、近年の大容量化が著しいストレージのニーズにマッチした。現在では、Fortune 100社のうち80社あまりが同社のストレージソリューションを利用しているとのこと。中西氏は、「日立が持つ高い要素技術に、現地のニーズをフィードバックしつつ開発を進めてきたことが功を奏している」と説明する。

 水道や電力などの分野でも海外プロジェクトが次々と展開されている。日本の顧客とは大きく異なるニーズに、さまざまな方法で対応してきた結果だという。

 「例えば水道事業。国内では1つ1つのポンプの仕様など細かくアピールするのが一般的だが、海外では需要量とのマッチングの段階から運用までを含めたトータルな提案が好まれる。2015年に供給開始予定のインドでの海水淡水化プラントでは、工事やファイナンスなど自社の得意でない分野に関して新たなパートナーと手を組んで提案をしてきた」(中西氏)

「一括提供」で獲得した海水淡水化プロジェクト案件 「一括提供」で獲得した海水淡水化プロジェクト案件

 「モノ作りの本質とは『現場』『現物』にある。モノ作りの現場だけでなく、新たな発展をみせている現場にも重点を置くことが重要だ」と中西氏は強調する。

 「水道分野でいえば、欧米の水事業プレーヤーは、配管の品質などといった部分までは関与しない姿勢を取る。しかし、そこまでのトータルなサポートを求める顧客もいるし、そのようなニーズについて自ら発信しない顧客もいる。そこで、顧客のニーズをフィードバックして、商品に反映させていくことが重要となる。このように、グローバルなパートナーや顧客との関係でを生かしていけば、欧米のメジャーなプレーヤーとも、そして今後台頭してくるであろう中国や韓国などアジアの新興プレーヤーとも違った強みを出していけるだろう」(中西氏)

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