弥生が事業主向けにクラウドサービスを提供へ、経理業務の効率化を強化

入出金などのデータを専用サイトに登録することで経営状況を容易に把握でき、提携する会計事務所ではデータの取得を通じて報告書作成などの業務を効率化できるという。

» 2012年07月24日 16時51分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 弥生は7月24日、小売や飲食、理美容など事業主を対象にしたSaaS型の経営支援サービス「やよいの店舗経営 オンライン」を発表した。会計事務所と連携して経理業務の効率化や経営強化のための支援を提供していく。

 新サービスでは事業主などが入出金や売上日報などのデータを専用サイトに登録することで、売上や利益などの進捗、予想といった経営情報を参照できる。また、事業主が提携する会計事務所では専用サイトからデータを「弥生会計AE」に取り込め、月次報告書や決算書などの作成に利用できる。これにより、事業主側ではいつでも経営状態を把握でき、会計事務所では業務効率化や事業主への迅速な経営指導の提供といったサービスを提供できるようになるという。

「やよいの店舗経営 オンライン」のユーザー画面。左は飲食店での月次レポート例、右は小売店での日報例

 サービスの利用価格は月額1470円で、開始日から最大2カ月間は無料。弥生と提携する会計事務所(PAP会員)に利用を申し込む形となる。PAP会員は全国で約4500事務所あるが、新サービスに対応するのは400事務所ほどになる見込み。正規サービスの開始後に同社サイトで検索できるようにする。なお、PAP会員による顧問料が別途発生する。支払い方法は当初はクレジットカードのみで、順次拡大する予定。

 弥生の岡本浩一郎社長によると、新サービスは経理業務を会計事務所に全面的に委託しているような事業主の利用を想定している。「日々の記録を月に一度まとめて会計事務所に提出し、事務所でまとめて報告書を作成している。これでは日々の記録を店舗管理などに十分に生かせず、会計事務所からの報告やアドバイスも遅くなり、経営に支障が出る場合もある。会計事務所では月初めなどに作業が集中し、事業主をサポートしきれないという課題がある」という。

 今後のスケジュールでは8月6日にオープンβをPAP会員限定でスタート。9月3日から正規サービスを開始する予定。来年9月までに3000件の利用を見込む。また期間限定で2011年10月〜2012年10月末に開業する個人を対象に、1年間の新サービスのモニター使用と税理士顧問サービスを提供する「店舗経営者応援キャンペーン」を実施する。

 新サービスは、日本マイクロソフトの「Windows Azure」を使用してマイクロソフトが提携する富士通のデータセンターから提供される。ユーザーのデータ保護については、Windows Azureでデータベースが三重化されており、さらに二段階のバックアップへ非同期で行うようにして、システム障害などによるデータ喪失を回避するとしている。

ソフトウェア会社からの発展狙う

経営方針とともに新しいロゴを披露した岡本氏

 岡本氏は、新サービス発表と併せて今後の経営方針を説明。ソフトウェアの開発・販売にとどまらず、中小企業や個人事業主のビジネスをバックアップする「事業コンシェルジュ」を目指すといい、ソフトウェアとインターネットサービスを組み合わせたサービスを展開することを表明した。

 「(初代「弥生会計」の発売から)25年にわたって業務ソフトの提供とソフトを利用してもらうためのサポートに取り組んできたが、ユーザーの真のニーズは事業の効率化や成功にあり、ソフトはそのための手段。『起業したい』といったことから『会計はどうすればいい?』というものまで、企業の悩みに応える弥生を目指す」(岡本氏)

 既にこの方針を具体化したサービスを提供しており、起業家支援サイトの「開業NAVI」や税務支援サイトの「青色申告応援プロジェクト」、福利厚生を支援する「クラブオフ」などが当たるという。このほかに業務相談に応じるヘルプデスクサービスや業務部門別のオンラインコミュニティなどを展開中である。

 新サービスの「やよいの店舗経営 オンライン」もこの方針の一環となるが、業務ソフトのサービス化を進めており、今後は「弥生オンライン」というブランドでクラウドサービスを本格展開する。同時に「弥生会計 1x」などのソフトのオンライン対応も進め、重要データをインターネット上にバックアップできるような機能を提供していく予定だ。

 岡本氏は、「クラウドを使いたいというニーズはあるが、既存のソフトユーザーは従来の機能や使い勝手の維持、ソフトを使っていない企業では簡単であることを求めていて一様ではない。当社のサービスではその中間を特徴にする」といい、ソフトとオンラインサービスの連携で、既存のヘビーユーザーを囲い込みつつ、新規顧客の取り込みを狙いたい考え。

 「あと5年もすると、ソフトウェア製品とオンラインサービスの“境界”があいまいになってしまうと思う。その時にユーザーにとってふさわしい形の仕組みを提供できるようにしたい」と語った。

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