ニュース
» 2012年09月28日 08時00分 公開

“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話:ゲーミフィケーション 「ポイント」は「円」に勝るのか? (2/2)

[萩原栄幸,ITmedia]
前のページへ 1|2       

ゲーミフィケーションの神髄とは?

 これだけの点では「ゲーミフィケーション」を語り尽くせないだろうが、前項で話を聞いた奥さんの中にはこう話す方もいた。

 「当然、現金値引きですよ。その場で周辺店の安売りチラシを見せてぎりぎりまで値引かせるの。そのうえでポイントを倍増してもらうのよ。あっちがいい、こっちがいいじゃないの。おいしいところは全部もらいたいの。これが主婦の本音よね」

 予期しなかった答えに筆者は脱帽した。

 奥さん方のコメントで気になるところがある。それは「ついでにポイント貯まるのではなく、貯めるために商品を買う」という部分だ。これはある意味「本末転倒」だと思う。「お金を貯めて目的の品物を買う」のではなく、ポイントを貯めることが主眼となっている。目的と手段が逆転した、一部の「どけち」(節約家ではない!)と同じ発想だ。

 健全な人間ならお金をいくら貯めても、自分のためにそれを利用しなければ何の意味もない。お金は使ってこそ意味があるからだ。お金はあり過ぎると騒動の元にもなる。子や孫のためにある程度の蓄えは残しておいてもいいだろうが、過ぎたることに良いことはないだろう。

 だが商売としてもう一度考えてみると、ここまで消費者が考えてくれるならこんなに嬉しいことはあるまい。ポイントを貯めることが目的になっているのだから、多少不便でも多少値段が高くても必ず、ポイントを貯めるために顧客が来てくれるのだ。

 ここまで書いて、星新一氏のある短編小説を思い出した。その中に、「貴重な○○全集がほしい場合にコンピュータが、『それは△△を購入すると景品で貰える』と回答する」という一節だ。これを読んだのは筆者が学生だった40年近くも前のことだが、当時はほとんど貴重品が景品で供給されており、人々はそのために物を買うという話だったと思う。この内容も本末転倒だが、星氏はそういう世の中を鋭く風刺していたのではないかと理解をしていた。

 「ゲーミフィケーション」からポイントシステムに話が広がったが(それこそ本末転倒なのかもしれないが……)、それだけ今のポイントシステムには危険な要素が入っていると筆者は感じている。究極的にはポイントという手段が第二の通貨として台頭し、本家の「円」を超えてしまうかもしれない。

ゲームの感性はますます重要に

 本稿の大半をポイントに割いてしまったが、ポイントだけではない。ゲーミフィケーションには、ほかにもさまざまな形態がある。

 ある会社では○○賞を社員に贈って激励し、そういう賞をほしくて社員は頑張るという。別の会社ではチームの貢献度を数字化して、チーム同士で競い合ったり、営業では売上目標を超えると旅行券やお米券が貰えるという仕組みを取り入れている。まさしく「ゲーミフィケーション」である。

 ゲームをクリアするたびに、新しいゲーム(目標)が出てきて、困難なゲームほどその達成した場合の「ご褒美」も大きい。こうすることで意欲の無い人が一生懸命にその場面に参戦していく。しかも、精神衛生面でもその他の目標をクリアすることに比べれば、無理ない努力を実現できる。

 「ゲーミフィケーション」には小さな心配が少々つきまとうものの、利用者は総じて楽しむ傾向にあるようだ。読者の会社でも可能なら、ぜひ無理のないところからこの「ゲーミフィケーション」の要素を取り込み、業務効率や生産性の向上、業績拡大につなげてみてはいかがだろうか。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -