企業のモバイル導入が注目を集めているが、その基盤では「管理性」が重視されてきた。SI大手のCECでモバイル基盤製品の開発を指揮する高木英樹氏は、「ユーザー企業は使い勝手をより重視するようになった」と話す。
企業のモバイル導入が広がる昨今、その運用基盤にはMDM(モバイル端末管理)システムやセキュリティ対策が不可欠とされる。企業としての利用で「管理性」を重視するのは当然のこと。だが、厳格な管理性が使い勝手を損ない、企業が本来求める利便性を確保できないといった意見もあるという。
9月末にモバイル活用支援製品「cloudappbase」をリリースしたシーイーシーで、同製品の開発を担当するPROVEQ事業部第二サービス部 部長の高木英樹氏は、「開発前に顧客へヒアリングしたところ、『既存のMDMは管理機能やセキュリティがあまりに厳格で、モバイルが使いづらいものになっている』という声が聞かれた」と話す。
企業がモバイル導入で狙うのは、例えば、移動時間に仕事ができることでの生産性向上など。しかし、モバイル端末を持ち歩くことで盗難や紛失の危険性が高まり、それによる情報漏えいといった新たなリスクを伴う。企業のモバイル利用は、使い勝手とセキュリティの両立が難しいジャンルの1つでもある。
ベンダーなどが提供するソリューションも幾つかのタイプに分かれ、セキュリティ重視では業務データを端末に保存しない仕組みを、使い勝手重視ではダウンロードできる仕組みを採用している(ハイブリッド型もある)。cloudappbaseは後者を採用し、その代わりにダウンロードしたデータは端末内の限定された部分に暗号化して保存し、第三者がデータを取り出しても復号化できないように配慮したという。同社のファイル共有サービスを併用すれば、前者の使い方も可能という。
ソリューションが多様化する中でユーザー企業がどの仕組みを採用するかは自社のポリシーに基づいて判断されるが、今後重要になるのは、自社にとって最適なモバイル利用のあり方を確立できるかだ。
「IT管理者の立場ではセキュリティ重視のシステムを考えがちだが、それでは使い勝手を求める業務部門からのクレームに追われてしまうことになりかねない。顧客企業の間では業務部門の視点でモバイル利用を考える傾向が強まっている」(高木氏)
このことは、個人のモバイル端末を仕事にも使う「BYOD」の認知拡大とも相まって目立ち始めた。「今のポリシーではBYODを禁止しているが、市場の動きをみるに、将来は解禁せざるを得ないと考える企業が少なくない」という。
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