クラウド時代で再注目するロードバランサMaker's Voice

ECサイトのIaaS利用などクラウドの利用シーンが広がる中で、Webアクセスの最適化に不可欠なロードバランサ(LB)の意義が高まっているという。リバーベッドとSCSKはソフトウェア型LBの活用を提唱する。

» 2012年12月06日 07時55分 公開
[ITmedia]
ティム・グッドウィン氏

 「クラウドサービスの本格的な普及から、ロードバランサに対してアプリケーションの可用性向上という役割が強く求められている」――リバーベッドテクノロジーズ カントリーマネージャーのティム・グッドウィン氏は、ロードバランサ製品のトレンドをこう説明する。同社は2011年7月にネットワーク最適化製品を手掛けるZeus Technologyを買収。ソフトウェアベースのレイヤ 7ロードバランサ「Stingray Traffic Manager(買収以前は「Zeus Traffic Manager」)」の展開に力を入れているという。

 ロードバランサは長らくアプライアンスで提供されてきたが、近年はクラウドサービスの普及から、ソフトウェアでの利用ニーズが高まっているとのこと。「一般的には『ボックス』のイメージが根強くあるが、現在ではソフトウェア型の製品が急成長している。ユーザーにとって最大のメリットは使い勝手の良さ」とグッドウィン氏は強調する。

 クラウドサービスのメリットの1つとして、使いたい時にITリソースを柔軟に使える点が挙げられる。IaaSなどではECサイト事業者が、繁忙期に安定したサービスを提供するため一時的にシステムをクラウド上に展開するような利用シーンがおなじみになりつつある。グッドウィン氏は、ソフトウェア型のロードバランサがこの点で重要な役割を担うと話す。

 「L2/L3の『ボックス』型のロードバランサは、予想されるトラフィックのピーク値に合わせた冗長構成が必要になる。しかし、EC事業者などWebサイト運営者にとってはこの予想は難しいところ。結果として過剰投資になり、負担も大きい。ソフトウェアのロードバランサなら、必要に応じてインスタンスを簡単に追加でき、クラウドなら使った分だけのコストで済む」

 同氏によれば、Stingray Traffic Managerの販売は四半期あたり30〜40%近く伸び、IaaSなどのクラウドサービス事業者での採用が拡大しているという。11月下旬にはAmazon Web Servicesでも利用できるようになった。ソフトウェア型のロードバランサはネットワークベンダー各社がここ数年の間に製品展開を始めたが、Stingray Traffic Managerは2003年から開発が継続されてきた。「L7にフォーカスしているので、例えばパケットの詳細解析によるアプリケーションの適切な配信やSSLの復号化/再暗号化処理などは『ボックス』と遜色無い」という。

橋本英梨加氏

 Stingrayの国内展開はZeus Technology時代からSCSKが行い、インターネットイニシアティブなどが採用している。リバーベッドは、ISPなどのデータセンター向けにStingrayの月額課金型ライセンスを提供しているが、SCSK ITプロダクト&サービス事業本部 IPネットワーク部の橋本英梨加氏によれば、同ライセンスはSCSKの要請で実現した。「日本発のライセンスモデルが海外事業者での採用にもつながっている」(グッドウィン氏)という。

 グッドウィン氏は今後、企業のプライベートクラウドでも採用が広がるとみるほか、クラウドサービス基盤のOpenStackやCloudStackへの対応も図ることで、次世代型データセンターのネットワーク環境に適した製品開発を目指すとしている。

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