人事異動の季節その2、異動する社員が注意したいポイント“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話(3/3 ページ)

» 2013年03月29日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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コンプライアンス上の注意点

 昨年、ある企業で驚くべきシーンに出会った。それは入社3年目のA君が初めての異動の際に、お世話になったからといって、なんと総務省の課長に手土産を持参しようとしたのだ。

 それを知った筆者は、「あなたは捕まりたいのか。自腹だから、異動だからといって許される行為ではないと知っていますか。そもそも、先方は絶対に受け取らないし、その後、あなたは上司から叱責、ひょっとしたら懲罰委員会にかけられますよ」とたしなめた。彼は、コンプライアンス教育を2回も受けているはずだったのだが……。

 また、忘れがちなものとして次のような点も挙げたい。

1.変更依頼を忘れずに

 取引先から来るメールやFAXといったもののあて先などを、全て変更依頼しておく。実際に、FAX先を変更しないでお客様から緊急のFAXが来たものの、受取先が異動しており、半日放置されて契約がパァになってしまった例がある。

2.借金は全て返済しておく

 友人だから、同じ社内の人間だからと思うのは自分だけである。異動が決まった時点で、速やかに返済すべきだ。たとえ実家から借金してでもというように、社会人としてのモラルが要求される。ただ、きちんと契約を取り交わし、毎月返済しているようなものは問題ない。

3.業務の引き継ぎ

 情報セキュリティからみると、業務を引き継ぎする社員では「名刺」の取り扱いが重要になる。筆者が、企業によってこの扱いが大きく異なることに気付いたのは10年ほど前であった。最近では個人情報保護法の観点でも議論されるケースも多いが、一般論としては、いただいた名刺は原則として会社のものであり、個人のものではない。

 また名刺をいただいた時点で、ある程度の広報活動は許容されるのが通例である。だが、その名刺を異動者が個人的に活用するのは違反行為になる可能性が高い。単純な顧客リストなら、明らかに違反となってしまう。友人と思う数人を除けば、あとは「利活用」という名目でも活用するのは避けた方が賢明だ。十分に注意すべきであるが、中高年を筆頭になかなか納得されない場合もある。友人と思っている名刺も、個人で開拓した顧客リストも、原則は企業に帰属する。必要なら、その分をきちんと提示し、異動先における活用の方法を説明した上で、会社から許可を得て情報をコピーすべきである。

4.入退室のカードキーや社員証などデジタル情報の変更

 当然ながら、ほとんどの企業ではきちんと会社の指示に基づいて作業しているだろうが、一部の企業では社員が自ら率先してメンテナンスを行わなければ放置されているケースが少なからずみられる。「今どきそんなこと……」と感じる人もいるかもしれないが、まずそこから変革しなければいけない企業がまだまだ多数あるのも事実だ。


 こうした点をきちんと作業することで、周囲も「あの人は誠実」と思ってくれる。ぜひ評価が上がる機会と考え、率先して情報セキュリティ強化のためにも、これらの点を「実践」して変革していくようにすべきではないだろうか。そして、すがすがしい気持ちで、4月からの新部署で仕事にまい進していただきたい。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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