AWSの一番手目指すアイレット田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2013年08月27日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
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パートナーとの協業がカギ

 cloudpackの売り方にも工夫を凝らす。ユーザーに分かりやすい商品を揃える一方で、AWSに関するさまざまな情報を積極的に発信する。「こんなことが可能になる」といった新しい活用もTwitterやメールマガジンなどで発信する。AWSの活用事例も自社サイトで紹介する。「事例は日本で一番多い」(齋藤CEO)。同社のAWSエバンジェリスト2人が全国を回ってAWS活用の啓蒙活動を行っており、こうした中から新規案件の獲得にもつながっている。

 パートナー企業との協業も推進する。「顧客のニーズにあった商品を開発するためだ」(齋藤CEO)。最近用意したトレンドマイクロのセキュリティ商品とcloudpackを組み合わせたサービスは、その1つになる。「1つの商材に仕立てるもの」(齋藤CEO)で、GMOグローバルサインとSSL認証書利用サポート、フルブライトとECサイト構築オープンソース「EC-CUBE」を設定した専用サーバープランを提供する。

 アイレットのAWSに関する基本的な戦略は、AWSにない機能をいち早く提供すること。「一番手にやることが重要。世の中に当社のことを知ってもらえる」(齋藤CEO)。トレンドマイクロのセキュリティ商品を組み合わせたものは、その典型的なケースになる。2012年3月に、AWSが提供する専用線「AWS Direct Connect」とNTT東日本の「フレッツ光」などを利用した、クラウドとの拠点間接続サービスを開始した。

 実は、AWSはこのサービスをシンガポールなど海外で提供しているが、日本ではサポートをしてなかったという(編注:日本向けサービスではインポート/エクスポート機能のみサポートされていない)。AWSがいずれ日本市場でサポートする可能性があるが、齋藤CEOは「そんなことは気にしていない」という。AWSがサポートしたら、その先を進むサービスを開発すればいい、という考えだ。

 実は、同社がAWSのプレミアパートナーに認定される際、AWSでビジネスパートナー支援を担当するテレンス・ワイズ氏から「スピード感がある会社」と評価されたという。「まさに当社が目指していること」と、齋藤CEOは喜ぶ。


一期一会

 36歳になる齋藤CEOは、20歳でシステム会社に入社した。その後、「インターネット関連の開発をしたい」と思って、マーケティング会社に移籍し、ゴルフ場予約システムなどの開発に携わった。そこで、システム開発の新しいビジネスモデルを学んだことが、アイレットのクラウド事業に生かされている。予約システムの経験を、蓄積したシステム開発とサーバ運用の技術に取り込み、クラウドをベースにしたストック型ビジネスにしたことだ。

 齋藤CEOは運用・保守にこだわり、OSから分かる技術者集団を形成してきたという。そのために、「最初にやることが大切」とし、常に新しいことに意欲的に挑戦してきた。加えて、「社員一人一人が目立つようなスターチームにしたい」。システム開発で個人名が前に出るのは珍しいことだが、そうすることでユーザーから指名されることにもなるだろう。売り上げも2012年6月期の4億5000万円から2013年6月期は大きく伸びたという。これからも齋藤CEOの夢は膨らむ。

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