タブレットで佐賀が変わる? ワークスタイルと管理職の意識を改革する県庁の秘策地方自治体のIT活用探訪(2/3 ページ)

» 2014年03月25日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

在宅勤務を妨げた“雰囲気”を打開する秘策

 在宅勤務制度の利用を妨げた「オフィスで仕事をする」という雰囲気は、モバイルワークの実証事業においても大きな妨げになることが予想された。

 事業を担当する県統括本部情報課の松永祥和係長(最先端電子県庁担当)は、「もっと根柢の部分にあたる、働き方に対する意識を皆で変えていこうというのが、この実験での狙い」と話す。経営支援本部 人材育成・組織風土グループの陣内清係長は、「役所には非常に多くの書類があり、紙をベースにした働き方が当然となっていた。この機会に働き方を徹底して見直し、業務全体の仕組みを改善させたい」と述べている。

モバイルワーク実証事業を担当する陣内氏(左)と松永氏

 そこで、実証実験では県庁の所属長以上の183人を対象に、原則として週1日のテレワークを義務付けた(特定期間は週2日以上の実施)。実際にテレワークでの働き方を体験してもらうことで、「上司が残業しているので帰宅しづらい」といった職場の雰囲気を変えていくのが狙いだ。

 8〜10月に実施した結果、肯定的な感想を持った管理職者は22%、否定的な感想は4%だった。それ以外には、「テレワークでできる業務内容の限界を感じた」「このように改善したい」といった意見が多数を占め、「多忙で疎かにしがちなeラーニングに取り組めた」といったもののあった。

週1日のテレワークを経験した管理職者の感想

 テレワークの実施率は、全庁平均で8月が66%、9月が52%、10月が76%。9月に実施率が低下したのは、県議会対応などの業務が集中したためで、オフィスで業務せざるを得ないという管理職者は多かったようだ。

 管理職者に対するテレワークの義務化と同時に、県内11カ所と首都圏・関西の県の事務所に「サテライトオフィス」も開設した。サテライトオフィスにはPCや電話、Webカメラを用意。管理職者以外にも、通勤時間の長い職員や現場への出動が多い職員が利用できるようにした。Webカメラは、県庁内や別のオフィスに居る職員と表情を見ながらWeb会議を行うためである。

 2013年12月からは一般職員も対象に加え、希望すれば原則としてこのテレワークを利用できるようにしている。利用者からは、「移動時間が短くなり、時間を有効活用できる」「静かで良い」「積み残した作業を一気に処理できた」「遠距離通勤者には便利」「災害など緊急事態に活用できそうだ」といった意見が目立ち、アンケートでは82%が肯定的な感想を示した。

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