コンピュータの世界を変える、ハードウェアの雄が仕掛けるITの新しい形HP World Tour Report(2/2 ページ)

» 2014年07月03日 07時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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ヨドバシカメラも登場、ITインフラは生命線

 New Style of ITでいうモバイル、クラウド、ビッグデータといった領域は、ともすると新規ビジネスのためのアプリケーション層に話題が集中し、ベンダー各社もここで差別化を図ろうとしている。それらを支えるITインフラ層では汎用化、標準化といった流れからベンダーの差異が生まれにくなり、ユーザー側の関心もアプリケーション層に比べれば薄まってしまっている感がある。

 この点でHPは、ハードウェアベンダーとして歴史を刻んてきたことからも、とりわけこだわりがあるようだ。初日後半のセッションではITインフラに関する話題に時間が割かれ、サーバの仮想化と集約、クラウドとの連携、ソフトウェア定義のデータセンターというITインフラのステップを示しながら、同社の取り組みが説明された。

 例えば、統合型システム「HP ConvergedSystem」では仮想化集約やビッグデータ分析などのワークロードごとに、同社のノウハウをもとにハードウェアやソフトウェアの構成を最適化した製品をラインアップを展開する(日本では4月に発表)。コンサルティングサービスやIaaS、統合インフラ管理ツールの機能強化など、ITインフラ層を巡ってはあらゆるユーザーニーズに対応するための体制を拡大させている。

 HP テクノロジーコンサルティング バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのモハン・クリシュナン氏は、ITインフラにこだわるユーザー事例として、韓国の新韓銀行グループとヨドバシカメラを挙げた。

 新韓銀行グループではウォン高による韓国経済の停滞や相次ぐM&Aによってデータセンターが8カ所にまで肥大化し、ITインフラにおける複雑化や効率性の悪化といった問題を抱えた。そこで10年後の拡張性に対応し得るデータセンターに集約すべく、HPが検討段階のコンサルティングから参加し、ワークショップを通じた戦略立案やキャパシティプランニング、システムの導入実装までを包括的に手掛けたという。

韓国・新韓銀行グループにおけるデータセンター統合の効果

 その結果、新データセンターは処理能力が50%向上し、PUE値も40%改善された。その一方、10年間における350万ドルのファシリティコストや1000万ドルの電力コストの削減を見込んでいる。

 ヨドバシカメラはHPのソリューションで基幹システムの仮想化や統合化を図っており、近年ではインメモリデータベースの「SAP HANA」の導入でデータの高速分析も可能にした。クリシュナン氏は、「ECの成長、とりわけモバイルコマースの台頭にどう対応するかが小売業の課題。物流の最適化も叶えたヨドバシカメラは代表的な成功事例だ」と語った。

アジア各国のメディアの注目を集めたヨドバシカメラの事例

スパコンを冷やす

 HP サーバー担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのスティーブン・ボヴィス氏は、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けの新システム「HP Applo」を披露した。HP Apploでは完全水冷方式を採用したApollo 8000と空冷式の同6000の2つをラインアップする。

 ボヴィス氏によれば、Apollo 8000の完全水冷方式は米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)との共同開発によって実現した。NRELではエネルギーに関する各種研究にスーパーコンピュータを利用するが、膨大な計算処理においても徹底した省エネルギーを実現していく立場だ。水冷方式はデータセンターなどでも採用があるものの、特にミッションクリティカルなスーパーコンピュータでは技術的な難しさや万一のダメージリスクなどの観点から、水冷方式の採用には厳しい見方があったという。

 HPでは特に熱源となりやすいプロセッサやメモリ周辺を効率的に冷却しつつ、万一のリスクでもコンピュータにダメージを与えない特許技術を開発。特に冬場は熱交換によって生じた排熱をオフィスの暖房に利用できるという。

スーパーコンピュータでオフィスを暖めるというのも“New Style”といえそうだ

 その結果、ラックあたり最大144台のサーバを実装可能とし、処理能力は250テラフロップスを実現している。3メガワットの空冷システムを利用するデータセンターに導入した場合のCO2削減効果は年間3800トンと試算され、NRELではシステムの運用コストを年間最大80万ドル、排熱利用によるオフィスの暖房コストを同20万ドル削減できると見込んでいる。


 カンファレンス2日目はNew Style of ITのセキュリティが紹介されることになっている。

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