中外製薬のMRは、なぜ「2in1型Windows」を選んだのか

中外製薬が、製薬会社ならでは重要職種「MR」の貸与デバイスに、コンバーチブル型WindowsノートPCを選択した。これまでのiPad+PCの複数台体制を、なぜWindowsの2in1タイプに変えたのだろうか。

» 2014年11月10日 09時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

 国内大手の製薬会社 中外製薬が、クライアントPCをWindows 8.1環境へ全面移行(2014年10月開始)したことにともない、基幹業種 MR(Medical Representative:医薬情報担当者)約1700人の業務端末をWindows 8.1搭載のコンバーチブル型Windows PC「Let'snote AX3」(パナソニック)に刷新した。

photo 中外製薬のWebサイト

 MRとは顧客である医療機関や医者などの医療関係者に対し、自社製品である医薬情報の情報を提供し、売り込み、顧客ニーズや医薬品の有効性などをフィードバックする役割を担う薬品メーカーの基幹業種。医療機関を訪問する機会が多いため、すでにモバイルワーク環境としてノートPCやタブレット、モバイル通信のためのWi-Fiルータなど複数のデバイスを持ち歩いて活動していた。

経緯と課題:複数のデバイスを持ち歩く、外出時の負担

 従来より外出先でも基本業務をカバーできる環境は整えていた。ただ、大きいノートPCでは荷物がかさばり、身体的な負担が大きかった。

 ビュワー用途でタブレット(iPad)も採用したが、結果として業務システムと連携するメインのWindows PCは切り離せず、荷物の量として負担が大きいのは変わらなかった。

対策と方法:PCとタブレット、両方の機能を満たす軽量+長時間動作のデバイスを

 同社は2014年10月よりクライアントPCをWindows 8.1環境へ刷新。全社展開をはじめた。2010年、同社は約7000台のPCをWindows Vista Enterprise環境へリプレースし、ソフトウェア配信とインベントリ収集の業務を行うSystem Center Configuration ManagerとDesktop Optimization Pack for Software AssuranceによりクライアントPC管理の効率化を実践。「社内共通アプリケーションやセキュアな運用法などのルールに合致した 3種類の標準 PCを業務に応じて選択できるようにした。異動などで業務上の役割が変わったときを別にすれば、基本的には4年間使う」としていた。今年はその4年後にあたる。

photo 中外製薬がMR向けに選定した「Let'snote AX3」。ノートPCスタイルからタブレットスタイルに変わる360度回転ヒンジ機構を中心に、1.14キロの軽量ボディ、最大14時間の長時間動作性能を備える

 約1700人のMRへ「機能としてノートPCもタブレットも、そして社内業務も外出時も、1台で両方を満たす」を軸に考察した結果、11.6型Windows 8.1搭載ノートPC「Let'snote AX3」を選定した。Let'snote AX3は、LTEなどのモバイルデータ通信機能を内蔵可能で、重量約1.14キロ、約14時間動作(電源を入れたままバッテリー交換を可能とする「ホットスワップ機能」も搭載)の軽量+長時間動作を実現するモバイルノートPCとして、さらにディスプレイを360度裏返せる独自の機構により、タッチ対応のタブレットとしても使える機能性を特長とする。

効果と成果:1台にまとめて生産性を向上、トータルコストの削減に寄与

 「MRの生産性を強力に高め、売上を伸ばすのが目的。デバイスが2つから1つに減ったならば、端的にコストは約半分にできる。デバイスのコストだけでなく、運用、保守、通信費、営業管理費なども含めたTCOを削減できる」。採用に至った大きなポイントはここだ。

 法人・業務シーンにも、特に外出機会が多い営業職に向けてタブレットの導入事例が進んでいる。ただ、モバイル業務環境を先行して導入した企業が「残念ながら、効果がなかった」と判断され、見直しを迫られる企業のIT部門担当者も増えている。

 インテルによると「昨今の日本企業のITコストは、約7割が運用コストに消えている」という。10年前の冷蔵庫やエアコンを使い続けるより、省電力化が進んだ新型に買い換えたほうが結果として年間コストが浮く。同様にITシステムも、一度モバイル環境を整えたからといってそれで終わりにはならない。運用コストを省いて節約するのではなく、より効率のよい方法へ最適化することでトータルコストを削減する考え方だ。結果として売上を高める事業戦略につなぐ、分かりやすい事例といえる。

 「ITシステムは、現時点の事情や業務内容に沿った打開策、刷新の施策を定期的に考え続ける必要がある。Windowsはいろいろなパートナーシップでもって、多種多様な端末がある。業務のあらゆるニーズに対応できる、そんなエコシステムであるのが強み」(日本マイクロソフトの樋口社長)。

photo 中外製薬の事例は、The Microsoft Conference 2014で日本マイクロソフトの樋口社長が好例と紹介

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