EUの場合、RFIDでの経験やノウハウをベースに、IoT関連施策の枠組みを作り上げてきたのが特徴だ。
2006年3月、欧州委員会がRFIDに関する意見聴取を開始したのが発端となった(参考:「Commission launches public consultation on radio frequency ID tags)」)。2009年6月には、RFIDから医療、環境・エネルギーなど様々な分野に対象を拡張した「Internet of Things行動計画」が公表されている(参考:「When your yogurt pots start talking to you: Europe prepares for the internet revolution)」)。この計画では、重点項目として「ガバナンス」「プライバシー/データ保護」「チップの沈黙に関する権利」「新たなリスク」「不可欠な資源」「標準化」「研究開発」「官民連携(PPP)」「イノベーション」「機関における認識」「国際対話」「環境」「統計」「進化」の14分野が挙げられた。
EUの専門機関である「欧州ネットワーク情報セキュリティ庁」(ENISA)も、RFIDを想定したInternet of Things行動計画に準じて、IoTにおける利点と新たなリスクを整理し、2010年4月には、飛行機の旅行をシナリオに用いてIoTおよびRFIDのリスクに関する評価結果を公表している(参考:「Flying 2.0 Study of Internet of Things/RFID in air travel launched)」)。
このようなRFIDにおける経験も踏まえ、欧州委員会は2012年1月に「プライバシーに関わるEUデータ保護指令改正案(関連プレスリリース)を公開した。改正案では以下のような点が追加・強化されている。
個々の追加・強化点をみると、企業の情報システムの管理対象が、従来のクライアント/サーバ型システムから、RFIDやスマートフォン/タブレット、センサ機器へと拡張する中で、既存のプライバシー保護対策の考え方を生かしながら、IoTに拡張させようとするEUの姿勢がうかがえる。
第1回:ビッグデータ利活用の表舞台に立つプライバシーとセキュリティ
第2回:IoTとビッグデータがもたらす社会変革とクラウドセキュリティ
第3回:ソーシャルメディアで加速するビッグデータ利活用とガバナンス課題
第4回:セキュリティ/リスク管理から見た米国のオープンデータ戦略
第5回:新規事業創出で注目されるクラウドストーミング、利点とリスクは何か
第6回:世界や米国にみるセキュリティ人材の育成術と日本の課題
第7回:健康・医療分野におけるビッグデータイノベーションの動向
第8回:研究開発を牽引するクラウドとビッグデータ、リスク管理をどうするか
第9回:米シカゴにみる、市民参加で地域課題の解決を目指すスマートシティの最前線
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