インメモリ技術のマルチテナント運用に向けた布石、SAPがHANA新版

SAP HANAの最新版では共通システム基盤でのマルチテナント対応や数百テラバイト級のデータをインメモリ展開した際の対応など、複数アプリケーションで同技術を本格運用した場合を見越した機能拡張が図られた。

» 2014年12月02日 16時13分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 SAPジャパンは12月2日、インメモリ技術製品「SAP HANA Service Pack 9(SP9)」をリリースした。将来における様々な業務システムでのSAP HANAの利用を見越し、多数の機能拡張が図られている。

 SP9での新機能のうち今後のユースケースに備えたものとして同社が挙げるのが、「マルチテナントデータベースコンテナ」と「シンプリファイダイナミックティアリング」の2つだという。

 マルチテナントデータベースコンテナ機能は、1つのシステム基盤およびSAP HANAのインスタンス上で複数のデータベースおよびアプリケーションを稼働させるものとなる。テナントごとにデータやユーザー、リソースなどを管理できるようになり、システム基盤およびコンテナ単位の運用の効率化を実現するという。

マルチテナントデータベースコンテナ機能の概要

 同社リアルタイムプラットフォーム部長の大本修嗣氏によると、現状でSAP HANAの利用はハードウェアを含めて複数のシステムに分かれている場合が多い。ただ、システム基盤側ではハードウェアの共通化などによる運用効率化に向けた取り組みが企業で進んでいる。このため、SP9でマルチテナント化を図り、共通化されたシステム基盤上で複数のアプリケーションとSAP HANAを使えるようにした。

 一方のシンプリファイダイナミックティアリング機能は、SAP HANAで処理するデータ量が数百テラバイトから数ぺタバイトに大規模化した場合に備えて、アクセス頻度の高いデータ(同社は「ホットデータ」と呼ぶ)はメモリ上に、ホットデータよりもアクセス頻度がやや低いデータ(同社は「ワームデータ」と呼ぶ)をディスク側に配置する。

シンプリファイダイナミックティアリング機能の概要

 ハードウェアプラットフォーム製品では数十テラバイトクラスのメモリを搭載するものも出始めているが、同機能はシステム面よりも先にデータ量が増える場合に備えた機能という位置付けだ。SP9でのティアリングは事前に定義を設定する必要があるものの、今後は自動化やSSD、高速のI/Oなどへの対応を図るとしている。

 SP9ではこの他にもETL機能やデータクレンジング機能などの統合(従来は別製品として提供)、Hadoopを利用した並列分散処理を行う際のユーザー定義関数の利用といった機能強化を行った。

ソリューション&イノベーション統括本部長の堀田徹哉氏

 SAP HANAの動向について同社ソリューション&イノベーション統括本部長の堀田徹哉氏は、「情報システムの基盤としてビジネス分析だけではなく、ビッグデータ処理や業務アプリケーションにも広がりつつある」と説明した。同氏によれば、SAP Business SuiteにおけるSAP HANAの採用率は約7割に達し、「SAP HANAでERPを動かそうというケースが急増している」という。

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