テレビ朝日が見据える次世代テレビ ビッグデータは「何」を変えるのか(2/3 ページ)

» 2015年06月16日 15時00分 公開
[岡崎勝己ITmedia]

 「LINK ID」と命名されたこの仕組みで発行されたCookie数は累計で1400万超。その分析を通じ、1週間で約100万ユニークユーザーの存在が確認されているという。

 LINK IDにより収集されたログは、「LINK:s」と呼ぶ分析基盤に取り込まれ、さまざまなかたちに加工される。同システムは「リアルタイム番組連携機能」や「リアルタイム高速集計機能」、「視聴情報ビッグデータ管理機能」、「SNS連携機能」などを備えている。

 LINK:sによるビッグデータ活用を本格化させたのは2年前(2013年)のこと。その分析基盤に、AWS上で大量データの高速解析を実現する「Amazon Elastic MapReduce(Amazon EMR)」とHadoop上のデータウェアハウス(DWH)構築環境「Apache Hive」を用いている。松下氏は「当初は利用ログが未確定なこともあり、プログラミングベースの環境で十分との考えがありました。その上で、運用コストと汎用性の高さを要件に選定した結果、両者の組み合わせが最適との結論に至ったのです」とその選定理由を述べる。

 運用が進むにつれ、新たな課題も浮上した。代表的なものが、より多様なリポート出力ニーズへの対応である。当時、データ分析に関するシステム担当者は松下氏を含めてわずか2人であった。要望を個別対応していくには現実的でなく、迅速を望む現場のニーズに応える何らかの策が求められるようになった。

 そこで松下氏が下した決断は、使い勝手の高いBI(Business Intelligence)ツールの採用で、現場に近いスタッフ自身で行えるリポート出力機能を用意することだった。取り組み当初からの経験と、データ活用が社内に広がる中で、利用頻度の高い情報、必要とされるログの傾向も見えてきたからだ。

 こうした方針のもと、テレビ朝日は2014年に分析基盤を刷新し、BIツール「Tableau」を新たに導入。あわせてTableauとの連携を考慮し、Amazon EMRをクラウドDWHの「Amazon Redshift」に置き換えた。

photo 多様なリポート出力ニーズへの対応のため、BIツール「Tableau」を新たに導入。Amazon EMRもRedshiftに置き換えた

 「Amazon RedshiftはTableauへのデータ出力が容易に行え、すでに連携実績も豊富に存在しました。加えて、PostgreSQL互換のSQLが使えるなど、我々でも扱いやすいこともメリットと判断しました」(松下氏)

 システム開発に要した期間は約3か月。かなり短期で行えた。その過程で、テーブル構成の再設計やデータのクレンジング、マスターデータなどの追加作業も実施した。できあがった新たな分析基盤は、分析ニーズのさらなる多様化を視野に、ビジュアル面の追加開発にも対応させている。

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