テレビ朝日が見据える次世代テレビ ビッグデータは「何」を変えるのか(1/3 ページ)

身近なテレビもクラウドで変革していく。クラウドを軸にしたビッグデータ分析基盤によって、テレビ朝日は近未来のテレビのあり方をどう描いているのだろうか。テレビ局のIT×ビッグデータ活用の意図とポイントを聞いた。

» 2015年06月16日 15時00分 公開
[岡崎勝己ITmedia]

 日本民営放送事業者のキー局として、「報道ステーション」や「ミュージックステーション」などの人気テレビ番組を手掛けるテレビ朝日。同社は番組の視聴率の向上を目的に各番組にひも付くデータの収集と活用を積極的に進めており、そのための仕組みをAmazon Web Services(AWS)上に構築している。

 アマゾン データ サービス ジャパンが開催した年次イベント「AWS Summit Tokyo 2015」に登壇したテレビ朝日 サイバーメディアシステムグループ兼コンテンツビジネスセンターの松下剛氏に、テレビ局のIT×ビッグデータ活用の意図とポイントを聞いた。

photo テレビ朝日のWebサイト

テレビの未来のため、ケータイの時代からノウハウを蓄積

photo テレビ朝日サイバーメディアシステムグループ兼コンテンツビジネスセンターの松下剛氏

 テレビ朝日がビッグデータに着目した背景、それは「IT技術の進化によって視聴者の反応を多様なかたちで探れるようになったため」という。

 例えば「dボタン」データ放送の仕組みは、リモコン操作した視聴者の反応をほぼリアルタイムに把握することも可能だ。同じく利用者の手元にあるスマホなどと組み合わせた仕組みも整備し、視聴者の参加を促す番組も珍しくなくなった。

 また、番組の公式Webサイトなどのログ解析から、視聴者の関心事を推察して把握する技術も進んだ。松下氏は「放送局としての一番の関心事は、いかに番組を視聴してもらえるか=視聴率を高められるかということ。世間の流行や需要をいち早く察知した番組作りが欠かせないのは昔も今も変わりません。ただ、IT技術の進化でこれまでなかったデータを活用して考察できるようになったことが昔と違います。テレビ朝日はフィーチャーフォンの時代から、テレビ以外の端末を“セカンドスクリーン”と位置付けており、そこで得られた情報の活用法について試行錯誤を重ねてきました」とテレビ局におけるデータ活用の意義を解説する。

 テレビ朝日では組織としてデータの活用を円滑に進めるため、番組にまつわる各種データの次のように整理している。


photo 番組にまつわる各種データのこのように整理し、得たデータの有効活用を図っている

 そのうち特に価値が高いと位置付けるのが、番組の推移とほぼ連動して収集され、リアルタイムな視聴者の反応だと判断される「セカンドスクリーン連動ログ」と「プレゼント応募ログ」だ。次に番組のWebサイトで収集される「アクセスログ」や「購買ログ」になる。後者は視聴には直結しないが、少なくとも番組に関心がある視聴者の反応だと推察できる。

 「我々の情報活用に向けた基本アプローチは、放送局だからこそ入手できる情報に特化して収集・管理し、分析を行うことです。SNSなどのデータも確かに有益です。それらは必要に応じて外部から調達しています。すべてを自社でまかなうことは、手間やコストの面から現実的ではないのです」(松下氏)

視聴者ログを統合管理し、役立てる独自の仕掛け

 テレビ朝日では、ログ収集と管理の仕組みにもひと工夫を凝らしている。具体的には、同社のWebサイトにアクセスした端末に対してユニークなIDであるCookieを発行することで端末の識別を可能にし、匿名性を保ちつつも個々の視聴者のアクセス情報を統合管理できる環境を整備した。

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