「全社員2300人に会社貸与PCやめます」は成功するのか?(3/3 ページ)

» 2015年06月29日 11時00分 公開
[宮田健ITmedia]
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テレワーク対象者も全社員、果たして業務が回るのか?

 テレワークの導入を進める企業が増えてきているが、やはり職種によって向き不向きがあるもの。しかし、ネットワンシステムズの場合は全社員がテレワークの対象者となっている。事前に上長とテレワーク予定日のアウトプットを決めておけば、どこで仕事を進めてもいい。

 さすがに当日になって「今日はテレワークで自宅作業します」というのは認めていないそうだ。「例えば、お子さんが急に熱を出したので付きっきりで看病しながらテレワークというケースも考えられます。でも、それは本当にいいことでしょうか? 休まなければいけない場合はきちんと休みを取得しなさい、というのが当社のスタンスです」(西田氏)

 会社の執務室で進めたほうが効率がよい業務であれば出社する。大きなプロジェクトのキックオフなど、重要なミーティングであれば関係者全員が招集されるのは当然だ。もっとも出社して社内ネットワークに接続する際もVDI環境を使うので、オフィスも自宅やカフェ、移動中の交通機関などと同様にさまざまなワークプレイスの中の1つという感覚になってくる。

 そして、この取り組みは「人材採用面」でも効果が出始めているそうだ。「新入社員にとても好意的に受け入れられているようです。また、女性社員が新入社員の半数近くいることも当社の特徴ですが、その背景には“ここなら長く働ける”と安心してもらえているのではないでしょうか」(西田氏)

ネットワン 会議室には当たり前のようにビデオ会議システムが備わっている

 もっともワークスタイルの変化は管理面での課題を浮き彫りにもする。西田氏も「部長や課長など、従業員を管理する立場から悩みが出てきているのも確かです。しかし、台風や降雪、地震などで出社できないケースも増えてきていて、テレワークの利用頻度は上がっています。その結果『テレワークでも意外とアウトプットできる』と、全社員が感じてきているようです」とコメントする。

一気に導入することは難しいが、チャレンジする価値はある

 ネットワンシステムズにおけるワークスタイル変革は、東日本大震災の教訓やオフィス移転、そしてツールの進化など複数の要因がうまく重なった結果、成功したとも言える。加えて西田氏は「ある程度、トップダウンの意志決定があったことも効きました」と振り返る。

 情報システム部にとって“PCを管理する”ことは常識だった。しかし、西田氏は仮想デスクトップ環境とBYODを組み合わせた結果、「PCは管理する価値があるのだろうか?」と問い掛ける。管理対象が少なければ少ないほど、運用は楽になるはずだ。

 多くの企業で導入につまずいていたさまざまなITバズワード的ソリューションが、当たり前のように使われているオフィスがネットワンシステムズにより作られていた。もっともシステム導入の提案が本職の彼らにとって、“人柱”となって知見を蓄積することは競合企業への差別化ポイントなのかもしれないが……。

ネットワン 内線をかける感覚で世界中の支社とつながる
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