「全社員2300人に会社貸与PCやめます」は成功するのか?(2/3 ページ)

» 2015年06月29日 11時00分 公開
[宮田健ITmedia]

転機は3.11――緊急事態に走りながら考えた

 どんな端末からも画面共有で業務システム、メール、コラボレーションツールを利用できるように整備を進めたネットワン。ツールの導入だけでなく、リモートワークも含めたオフィス環境、そしてそれらを活用した働き方を実現するために就業制度なども約3年をかけて変更してきた。その経緯を振り返ってみよう。

ネットワン (出典:ネットワンシステムズ)

 同社がVDIを導入し始めたのは2010年3月のこと。PC運用管理の効率化を目的に120台からスタートしたが、この時点から将来的には約3000台にまで拡大することを視野に入れていた。転機となったのは2011年3月に発生した東日本大震災だった。当時、VDIは先行導入した一部部署での検証フェーズ。しかし、緊急事態だ。必要な社員が使えるようにと未使用のライセンスを全部出した。

 また、顧客の中には輪番停電に備えて急きょ土日と平日を入れ替えるところもあった。この対応のため残業時間が増加し、人事制度のチューニングの必要性を感じたという。そこで2011年4月から、従業員が安心してVDI環境を生かした働き方ができるように人事制度の変革に着手する。「テレワーク」や「フレックス制度」の導入だ。西田氏は「ツールだけ入れてもダメだし、制度だけ整備してもダメ。でも、正解が分かっていたわけでもありませんから、実際には試しながら考えていましたね」と振り返る。

チャットやビデオ会議が主流の働き方に抵抗感は?

 2013年5月、同社は東京駅に隣接するJPタワーに移転。同時にオフィスは全面フリーアドレスとなり、コラボレーションツールの利用に拍車が掛かる。

 例えば、コミュニケーションツールには、Cisco Jabberを採用。PCやスマホ、タブレットなどさまざまなデバイスで、同僚がいま在席しているのか、会議をしているのか、それとも通話中なのかが一目で分かる。「スケジューラとも連動しているので、ステータスは自動的に変更されます。何か声をかけたいときはチャットで気楽に話しかけられるようになりました」(西田氏)

 プライベートにおいてコミュニケーションの軸足をメールからLINEなどのチャットツールに移しつつある若手社員にとって、このような働き方は問題なく対応できるだろう。だが、そうでない社員からの反発はなかったのだろうか?

 「確かに当初は、部長などの上の年代やバックオフィス部門のスタッフなどからは『よく分からない』という不安の声が聞こえてきました。でも1カ月もすると何事もなかったかのように普通に利用していました。使ってみたら便利さが分かるのでしょうね。今では、北海道から沖縄まで、全国のオフィスとのやりとりもチャットやビデオ会議が中心になっています」(西田氏)。

ネットワン 取材時にも3地点をつないだビデオ会議が行われていた

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