SAP HANAは次世代の「プラットフォーム」として広がるかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年07月06日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

プラットフォーム市場競争においてSAPは“破壊者”

 図2に示したのが、最新のHANAプラットフォームの全体像である。鈴木氏は「この図を見ていただければ、HANAはもはやインメモリデータベースだけでなく、さまざまな機能やサービスを具備していることがお分かりいただけると思う。しかもデータベースは構造化データだけでなく非構造化データも扱える。さらにHANAの真骨頂といえるのは、内部でデータをリアルタイムに分析し加工できることにある。まさしく、これまでの企業システムにおけるプラットフォームの概念を大きく変える、新たなデジタルビジネス時代に向けた統合プラットフォームだと自負している」と胸を張った。

photo 図2 最新のHANAプラットフォームの全体像

 鈴木氏によると、HANAの現時点(2015年7月)での導入実績はおよそ6400社。「この2年間で倍増し、右肩上がりのカーブがさらに上向きになりつつある」という。また、クラウド版HANAとして2013年5月に発表された「SAP HANA Cloud Platform」の導入実績もおよそ1400社で着実に伸びているようだ。今後はクラウドの普及ととともに、このPaaSが同社にとって重要なサービスとなる。

 さらにSAPにとって命運を賭けたサービスともいえるのが、今年(2015年)2月に投入した「SAP Business Suite 4 SAP HANA(S/4HANA)」だ。これはERPを中心とした業務アプリケーション群で、同社にとってはERPとして23年ぶりに刷新した主力製品である。

 S/4HANAで注目されるのは、文字通りERPとHANAの一体化を図っていることだ。データベースについては、従来のERPでは他社製品も利用できたが、S/4HANAではHANAのみを適用。HANAの特性を生かしてアプリケーションとの最適化を図った格好だ。この動きからもSAPのHANAへの“全力投球”ぶりが見て取れる。

photo 独SAP SEエグゼクティブボードメンバー プロダクト&イノベーション担当のバーンド・ロイケ氏

 ただ、成長ぶりに勢いがあるとはいえ、競合となるOracleのプラットフォーム市場での存在感は非常に大きい。HANAは同市場で確固たる存在感を示せるのか。「SAP SELECT」に向けて来日し、個別に記者会見も開いた独SAP SEエグゼクティブボードメンバー プロダクト&イノベーション担当のバーンド・ロイケ氏にこの点を単刀直入に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

 「プラットフォーム市場での競争という観点からいえば、われわれは“破壊者”だ。企業システムのプラットフォームは、スマートフォンのアプリのようにすぐに変えられるものではないが、今後のデジタルビジネスに向けた次世代のプラットフォームに求められる機能やサービスを備えているのはHANAだけで、必ず多くの企業に活用していただけると確信している」

 これから起こり得る市場の変化を考えれば、SAPがプラットフォームを手掛けるのは必然だろう。しかも後発のほうが技術的に優位に立てるところはある。だが、競合するOracleの牙城を切り崩すのは相当なエネルギーを要するだろう。まずは世界中に29万社以上というSAP自身の顧客企業に、どれだけHANAを広げていくことができるか。大いに注目しておきたい。



前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ