AWSの最新サービスにみるクラウド市場の次なる“激戦区”Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年07月21日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

次なる激戦区は「APIエコノミー」と「機械学習」

photo アマゾンデータサービスジャパン技術統括本部ストラテジックソリューション部長の大谷晋平氏

 まず、Amazon API Gatewayについてもう少し説明しておこう。大谷氏によると、「AWS自身がこれまでAPIをベースにITインフラを貸し出すビジネスを行ってきた中で得たさまざまなノウハウを多くの開発者の方々にも活用していただけるようにしたサービス」だという。さまざまなノウハウとは、APIの作成だけでなく、トラフィック管理やアクセス制御、性能モニタリング、バージョン管理などに及ぶ。

 つまりは、開発者にとってわずらわしいAPIの作成および管理を標準サービスとして容易に行えるようにして、AWS上でのアプリケーション展開を一段と活性化させようというものだ。言い換えると、これはすなわちAWSにおける「APIエコノミー」の拡大策である。

 このAPIエコノミーという言葉は今、クラウドサービスにおけるキーワードになりつつある。APIエコノミーとは、自社のプラットフォーム上のアプリケーションやサービスのAPIを公開し、他社がそのAPIを活用して新たなサービスを開発し公開することで、自社のプラットフォームの付加価値を高める経済活動、あるいはそれによってもたらされるビジネス商圏のことを指す。

 筆者の印象では、クラウドサービスでAWS追随に注力するIBMが最近、この言葉を盛んに使っている。その動きについては2015年5月11日掲載の本コラム「IBMが仕掛けるPaaS拡大戦略の狙い」を参照いただくとして、今後クラウドサービスベンダーの間でAPIエコノミーの拡大合戦が激化するのは間違いなさそうだ。

 もう1つのAmazon Machine Learningは、大谷氏によると「(親会社の)Amazon.comがこれまで電子商取引事業で培ってきた独自のアルゴリズムによる機械学習の技術をクラウドサービスとして提供するもの」だという。

 実はクラウドベースの機械学習サービスについては、GoogleとMicrosoftがすでに取り組んでおり、今回のAWSの本格参入でまさしく激戦区になるのは間違いない。興味深いのは、GoogleとMicrosoftも長年にわたる検索サービスなどでそれぞれ独自の技術を磨き上げてきていることだ。ビッグデータの予測分析という非常に大きな潜在需要をめぐる熾烈な戦いが、まさにこれから繰り広げられようとしている。

 クラウドサービスにおいて、その利用の広がりを示すのがAPIエコノミーならば、それをいかに深く利用できるかを示すのがマシンラーニング(機械学習)といえようか。この2つの次なる激戦区に、大いに注目しておきたい。



前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ