オラクルが示す「儲けるクラウド」の根拠Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年07月27日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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新規顧客の拡大につながるクラウドサービス

photo 会見に臨む日本オラクルの杉原博茂 取締役代表執行役兼CEO(左)と三澤智光 副社長執行役員クラウド・テクノロジー事業統括

 今回の日本オラクルの発表は、米国本社が6月22日に発表した内容を受けたものである。米国本社の発表会見では、ラリー・エリソン会長兼最高技術責任者(CTO)が説明に立ち、24種類におよぶPaaSおよびIaaSの新サービスを打ち出すとともに、「IaaSにおける最大の競合はAmazon Web Services(AWS)だ」と明言した。

 だが、日本オラクルの発表会見では、杉原氏や三澤氏からAWSに言及するコメントはとくになかった。そこで会見の質疑応答で、あえてシンプルに「IaaSでAWSと真っ向から戦うのか」と尋ねてみた。これには三澤氏が次のように答えた。

 「やり合う局面も出てくるだろう。ただ、オラクルはPaaSやSaaSも包括的に提供しているので、それらを利用されるお客様には、余計なインテグレーションやエンジニアリングを行わなくて済むオラクルのIaaSを選択していただけると考えている」

 筆者にはもう1つ、オラクルのクラウドサービス群がかなり整備されてきたこの機会に、杉原氏に聞いてみたい質問があった。それは「クラウドサービスで“儲ける算段”はついているのか」ということだ。

 この質問の背景を述べておくと、オラクルのクラウドサービスは杉原氏の冒頭の発言にもあるように急成長を遂げているが、全体の売上高に占める割合をみると、米国本社で4%強、日本では2%程度にしかすぎない。今後この割合が増えていく中で、売り上げの伸びや収益構造にも変化が表れてくるだろう。果たして今後の業績への影響をどう見ているのか。杉原氏は次のように答えた。

 「クラウドサービスは儲からないという風潮がかつてあったが、オラクルはクラウド化への流れは必然と考えて取り組んできた。いざ本格的に事業を展開してみて分かったのは、クラウドはこれまでの市場が移行するというよりも、新規顧客の開拓につながるケースが非常に多いことだ。例えば、これまでオラクルのデータベースやERPをお使いいただくのは大手のお客様が多かったが、クラウドサービス化したことで中堅規模のお客様にお使いいただくケースが非常に増えている。この現象は私たち自身も驚くほどで、オラクルブランドが広がっているのを実感している」

 「お客様が広がることは、当然ながら業績向上にもつながる。ただ、クラウドサービスは売り上げ計上の仕方がこれまでと異なるので、そこはうまくマネジメントしていかなければならない。その意味では業績の推移に一時的な変化が出るかもしれないが、ストックビジネスとして積み上げていけば、5年後には確固たる財務基盤を築くことができると確信している。私たちとしては、クラウドでビジネスを拡大することに今後も注力していきたい」

 ビジネスそのものの拡大によって“儲ける算段”はついているといったところか。杉原氏が会見の冒頭で「新規受注金額成長率の高さ」を強調してみせたのは、まさに「新規受注」がクラウドサービスの“肝”ということを示したかったのだろう。ただ、既存市場のクラウド化もこれから本格的に起こってくる中で、オラクルがどのようなバランスを取っていくのか。エンタープライズソフトウェア最大手の今後の動向に注目しておきたい。


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